錦絵にみる天保水滸伝

終了

会 期   平成11年4月13日(火)〜5月16日(日)  30日間 午前9時〜午後4時30分
休館日   月曜日(5月3日は開館)及び5月6日(木)
会 場   千葉県立大利根博物館第3展示室
入場料   無料

 「天保水滸伝」(てんぽうすいこでん)は、中国から伝わった「水滸伝」を模して、日本版に創作したものです。天保15(1844)年に利根川下流域を舞台に起きた飯岡(いいおか)の助五郎(すけごろう)一家と笹川(ささがわ)の繁蔵(しげぞう)一家との争いをもとに、江戸の講釈師宝井琴凌(たからいきんりょう)の創作したものが「天保水滸伝」といわれています。史実とは必ずしも一致しませんが、この物語が基本となって、講談や歌舞伎、後には浪曲としても広く語られるようになりました。また同様に、「天保水滸伝」に登場する人物が幾多の錦絵に描かれました。
 今回展示しました当館収蔵の3代豊国と月岡芳年の錦絵もその代表的なもので、タイトルは「近世水滸伝」となっていますが、「天保水滸伝」に関連した人物が中心となっています。
 本館では、すでに平成5年に開催した特別展「天保水滸伝の世界」において、「天保水滸伝」が娯楽物として世間に受け入れられていった背景や、彼等博徒(ばくと)が横行するに至った幕末期の社会情勢などを紹介しました。
 本展覧会では、幕末を代表する2人の浮世絵師が取り上げた様々な人物を御覧いただくとともに、錦絵による美の世界に触れていただきたいと思います。

『天保水滸伝』と錦絵に描かれた人物


 『天保水滸伝』は、実際の事件とそれに関わった人物をもとにつくられたものですが、事件は脚色され、登場する人物は必ずしも実名とは限りません。また、すべて実在していた人々であるかは不明ですし、同じ人物を扱っても、作者により名前や略歴に相違が見受けられます。それは3代豊国と月岡芳年の錦絵でもうかがわれます。
 本展覧会の人物紹介は、各錦絵及び大正6年に改編発行された月岡芳年画『近世狭義傳』(吉川弘文館・国画刊行会錦絵部)などによるものです。

●3代豊国画『近世水滸伝』

文久元(1861)年〜文久2(1862)年の制作。
 歌舞伎役者の演ずる博徒の姿で表現されています。大首役者絵(おおくびやくしゃえ)で色彩は華麗です。合計26点。

笠川髭造
銚子の五郎造 篠崎の政吉


●月岡芳年画『近世水滸伝』

明治5(1872)年の制作。動感に溢れ奔放奇抜(ほんぽうきばつ)な表現に特徴を示している。合計36点。

飯岡捨五郎 平田三木 生首六蔵