1 千葉市中央区市民センター

(旧川崎銀行千葉支店)


所在地 千葉市
竣工年 S2
所有者 千葉市
設計者 矢部又吉
施工者 不明
構造 RC2
外壁 モルタル塗り
屋根形状・葺材 陸屋根
建築規模 373.9m2

設計を担当した矢部又吉はドイツ留学の経験を持つ建築家である。古典主義的手法を得意とし,この建物にもそのことがよく現れている。銀行としてはそれほど規模が大きくないにもかかわらず,本格的ネオ・ルネッサンス様式の堂々とした建築となっている。   

ペディスタルのうえに,2層にわたるイオニア式オーダの付け柱を並べ,エンタブラチャーを支える。正面観の美しい半円柱は出入口の両側のみ吹き寄せに配する。また,建物の出隅部分の処理にも工夫が見られ,柱の配置に変化がつけられている。コーニスの上には一部バラストレードとなったパラペットが廻され,頂部を締めくくっている。内部ではトスカナ式オーダーの円柱と,大理石の営業カウンターが目を引く。また,2階部分には吹き抜けの空間を取り巻いてギャラリーが設けられ,空間の密度を高めている。     

この建物は川崎銀行千葉支店として建てられ,その後三菱銀行千葉支店となるが,昭和46年,銀行としての使命を終え,千葉市役所中央地区市民センターとして,新たな役割を与えられた。そして更にその敷地への新しい美術館建設に際し,旧建物をそのまま保存して組み込み,再利用することになった。後方の附属屋を取り除き,母屋のみを残して,正面中央に据え,その後方及び上部に新しく建築する計画であり,これまでにない斬新な試みとして注目される。市民に親しまれてきた建築が,新しい市民ギャラリーとなり,更に馴染み深いものになると期待される。[江口]


Back
Home
Up
Next