私達の身の回りには,長年にわたって利用を続けている堰や用水をはじめ,燧道,橋,運河,駅,トンネル,倉庫,道標など産業・運輸・交通に係る構造物が数多くあります。しかしながら,中には原状をよくとどめているものや社会の変化とともに改築されるものもある一方で,現在では使われなくなって風雨にさらされてとり残されたり,とり壊されたりして,遺跡としてしか残らないものもあります。これらの多くは,いずれをとっても明治以降に日本の近代化をめざした技術革新の歴史を物語っているものでありますが,全県的な実態については,今まで十分調査されませんでした。

 文化財保護法の改正により近代化遺産の保護が注目されている折り,千葉県教育委員会では千葉県における産業・交通遺跡の実態を調査し,今後の保護を進めて行くための基礎資料を得る目的で,平成8年度から3か年をかけて実態調査を行いました。

 本書は,その成果を調査報告書としてまとめたもので,近代の産業・交通遺跡の資料としてだけでなく,地域の歴史や文化を考えるための資料として広く活用されることを願っております。

この事業の実施にあたり,ご尽力いただいた千葉県産業・交通遺跡実態調査会の皆様をはじめ,資料の調査に快諾をいただいた所有者・関係機関各位に感謝申し上げます。

平成10年12月

千葉県教育庁生涯学習部文化課長
中 村   哲

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発刊にあたって

千葉県立現代産業科学館は,だれもが産業に応用された科学技術を体験的に学ぶことのできる科学館として,平成6年6月に開館しました。以来,年間30万人を超える皆様にご利用いただいておりますが,これもひとえに関係者各位をはじめ,皆様方のご支援,ご協力の賜と深く感謝申し上げます。

さて,当館では,千葉県教育庁生涯学習部文化課より事業依頼を受け,平成8年度から3か年にわたり「千葉県産業・交通遺跡実態調査」を実施してまいりました。幕末から第2次世界大戦が終了した昭和20年までに造られた建造物等は,その多くが,これまでの文化財の概念にはなかったものであり,現代社会の発展とともに急速にその姿を消しつつあります。このため,本調査は,これらの建造物等を産業・交通遺跡としてとりまとめ将来の保護対策を検討するための基礎資料を得る目的で行いました。本報告書は,その成果をまとめたものです。

本報告書が千葉県の産業・交通遺跡を理解する一助となり,多くの県民の方々に活用されることを期待しております。

最後に,この調査にあたりご多忙中にもかかわらず快く調査をお引き受け下さいました調査指導員の榛澤芳雄先生をはじめ,主任調査員,調査員の先生方および各市町村教育委員会の皆様に深く感謝致します。また,資料の調査にご協力いただきました関係機関,企業そして所有者の皆様に心からお礼を申し上げます。

平成10年12月

千葉県立現代産業科学館
館 長  岡 田 厚 正

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例言

1 本書は,千葉県立現代産業科学館が,平成8年から3か年実施した「千葉県産業・交通遺跡実態調査」の結果をまとめた報告書である。

2 調査は,平成7年度に千葉県教育庁生涯学習部文化課が市町村教育委員会に依頼した千葉県文化財実態調査(産業・交通遺跡)の予備調査結果に基づき実施した。

3 調査は,千葉県立現代産業科学館において調査会を組織し,榛澤芳雄調査指導委員(日本大学理工学部交通土木科教授)のもと,建築関係については江口敏彦(千葉県立市川工業高等学校建築科教諭),交通関係については小野田滋((財)鉄道総合技術研究所主任技師),土木関係については,為国孝敏(足利工業大学工学部土木工学科助教授)らの主任調査員が詳細調査の指導にあたった。詳細調査は以下の17名が担当した。

池田文彦,内山久雄,金成英夫,栗城一成,小早川悟,小山 茂,是永定美,齊藤 望,白石 稔,杉江 敬,瀧 和夫,立川 勇,広野平蔵,Martin N,Morris,山下耕一,阿部貴憲,在原 徹

4 本書の執筆は,2章および3章「個別解説」を調査指導員,主任調査員,調査員が担当し,それ以外の部分については,調査事務局が担当した。

5 本書記載の分類は,産業分類によらず,この調査独自の分類とした。

6 本書の調査内容については,各調査の実施時点で確認されたものについて記述している。

7 本書に便用した地図は,建設省国土地理院長の承認を得て,同院発行の2万5千分の1地形図を複製したものである。(承認番号 平10関復,第731号) (このホームページでは略)

8 記述は,できる限り「常用漢字」「現代かなづかい」を用いるようにし,本文中での敬称は略した。

9 参考文献については,参照した文献等も含めて記載している。なお,註で示した引用文献等については,編集の都合上,各々の文末に掲載した参考文献番号と併記して使用した。

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