企 画 展

平成10年1月15日から3月1日まで開催されました。

かねは天下の  まわりもの
〜江戸時代の貨幣制度を探る〜

 今日、私たちが普段使っている通貨(3種類の紙幣、6種類の硬貨)は、物品の購入手段であるとともに価値を見極める判断基準となっています。このように貨幣は今日の経済システムの根幹を成すものですが、その地位を得るまでには様々な歴史を経てきました。
  江戸時代といえば光り輝く小判、銭形平次が投げる寛永通宝が時代劇でおなじみです。しかし、実際には数多くの貨幣が鋳造され、それとともに単位も金、銀、銅の材質により複雑に分化しましたが、当時の人々は見事に使いこなしていました。
  この企画展では江戸時代の種々の貨幣を展示し、当時の貨幣制度の仕組みや時代背景を紹介するとともに、人々が貨幣とどのように関わりをもっていたのかを考えました。

1 貨幣のあゆみ  2 三貨制度と両替商  3 藩札とその役割  4 お金の魔力  

展示資料一覧  展示協力者

貨幣のあゆみ
 日本の貨幣のあゆみは、唐の開元通宝を手本に鋳造された和同開珎に始まります。平安末期から江戸時代まで無鋳銭時代が続き、多種の輸入銭と私鋳銭が市場に流通しました。江戸時代の三貨制度の確立によって全国で統一された貨幣が使用されるようになりました。近代に入り、明治4年の新貨条例により貨幣単位が「円」に変わり、明治15年に日本銀行設立、同18年に日本銀行券が発行され今日に至っています。

私鋳銭・輸入銭(五霞町教育委員会)
三貨制度と両替商
 慶長5年(1600)の関ヶ原の合戦に勝利し、事実上の覇者となった徳川家康は貨幣制度の統一に着手し、その翌年には慶長金銀貨が鋳造されました。以後江戸幕府は金貨・銀貨・銭貨の3種の貨幣を定め、全国通用貨幣の発行権を独占しました。これを三貨制度といいます。
  三貨はそれぞれ独自の単位を有するとともに、特に金・銀貨においてはその流通に地域的格差が生じていました。これら三貨の交換や流通の円滑化が図られた背景には両替商の活躍がありました。

享保大判(日本銀行貨幣博物館)
藩札とその役割
 幕府は統一的貨幣形態として三貨制度を確立させましたが、やがて各地で紙幣が分散的に発行されました。17世紀に最初の紙幣が発行されました。その後各藩は地域的な紙幣である藩札を発行するようになりました。これらの紙幣の誕生により三貨制度と紙幣分散発行が併存する特異な貨幣制度が形づくられました。

関宿藩札(当館)
お金の魔力
 貨幣には、ものを購入したり何かのサービスを得るという力があると同時に、ものの価値を計る尺度となり、また富を蓄えておく力があります。現在の貨幣経済の中においては、正貨(本位貨幣)と呼ばれる事実上の価値を有する金銀貨幣を使用せずに、1971年以降世界的に不換貨幣が使用されています。それは国家法のもとで保証された銀行券であり、それ自体に事実上の価値をもたないものですが、私たちは相互の信用のもとに貨幣を使用しています。このおかねに対する「信用」は、現在私たちが生きる社会だけでなく、時として神や仏にも通用します。神や仏に捧げる賽銭の額は、人により時により様々ですが、神仏に願いをかける心は変わりません。

栄町大鷲神社酉の市

展示資料一覧

○貨幣のあゆみ
大川天顕堂コレクション(国立歴史民俗博物館) 続日本紀〜高松宮家伝来禁裏本(国立歴史民俗博物館) 輸入銭(五霞町教育委員会) 貨幣司二分・一分・一朱金(古河歴史博物館) 太政官札(日本銀行貨幣博物館)
○三貨制度と両替商
大判・小判各種(日本銀行貨幣博物館、個人) 小柄・こうがい(東大史料編纂所) 試金石(東大考古学研究室) 浮世絵当世道外遊(たばこと塩の博物館) 小判所絵図(東大史料編纂所) 江戸金座絵巻(国立歴史民俗博物館) 佐渡金山金鉱石(個人) 棹金(国立歴史民俗博物館) 三井両替店絵図(さくら銀行) 千両箱(日本銀行貨幣博物館) 看板・銭函(国立歴史民俗博物館)
○藩札とその役割
山田羽書(日本銀行貨幣博物館) 江戸関八州通用金札(日本銀行貨幣博物館) 上総国飯野藩札・下総国古河藩札・安房国花房藩札・常陸国水戸藩札・武蔵国忍藩札(日本銀行貨幣博物館) 出雲国松江藩札・阿波国徳島藩札・伊予国宇和島藩札(千葉県立総南博物館) 下総国世喜宿藩札(当館)
○お金の魔力
絵銭(国立歴史民俗博物館) 成田山上棟銭(成田山霊光館) 念仏銭・骨壺(港区教育委員会) 六道銭財布(個人) 奉納額(成田山霊光館、金竜院) 奉納不動明剣(成田山霊光館) 熊手(大鷲神社) 和同開珎(千葉県立房総風土記の丘)

展示協力者

(敬称略)

大鷲神社 株式会社さくら銀行 京都府立総合資料館 金竜院 五霞町教育委員会 古河歴史博物館 国立歴史民俗博物館 千葉県文化財センター 栄町観光協会 滋賀県安土城郭調査研究所 たばこと塩の博物館 千葉県立総南博物館 千葉県立房総風土記の丘 東京大学史料編纂所 東京大学文学部考古学研究室 成田山霊光館 日本銀行金融研究所 子之神大黒天 港区教育委員会

飯田清 今村啓爾 上原信明 岡田茂弘 川根正教 木村卯平 後藤照子 小森善治 齋藤努 須田久仁彦 田嶋弘邦 畑勇吉 馬場章 林保 村松六之助


[戻る]

Copyrightc©2005 Chiba Prefectural Sekiyado-jo Museum. All rights reserved.