企 画 展
利根川改修100年
会期:平成12年8月12日(土)〜10月1日(日)
今年は明治33年に開始された利根川改修工事から数えて100周年にあたります。20世紀最後の年でもあるので、これにちなんで今世紀初頭からの近代化の中で河川が私たちに残してくれたものと、それに関わる産業や文化の発展を振り返り、21世紀における河川と私たちのあり方を展望しました。
1 工事の概要 |
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2 河川改修の礎 |
3 改修工事と人々 |
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4 改修工事の成果と流域の生活 |
展示協力者
1 工事の概要 |
浚渫船茨城号
(国土交通省利根川上流工事事務所) |
明治33年に始まった利根川改修工事は、対象区域があまりに長大で予算的
にも膨大なものとなることから、3期に分けて実施されました。
・第1期:利根川河口〜佐原 42キロメートル 明治33年度〜42年度
・第2期:佐原 〜取手 52キロメートル 明治40年度〜昭和5年度
・第3期:取手 〜芝根110キロメートル 明治42年度〜昭和5年度
この改修工事の特色は、それまでの水運のための低水工事から洪水防御の
ための高水工事へ転換したことです。具体的には、複雑に入り組む河道を整理
したり、湾曲部を直線化したりしました。
これらの工事では浚渫(しゅんせつ)船や掘削機、蒸気機関車といった大型機
械が導入されました。 |
掘削作業
群馬県尾島町付近にて
(国土交通省利根川上流工事事務所) |
2 河川改修の礎 |
デ・レーケ雇用契約書
(淀川資料館)
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明治維新を迎えると、政府は近代的な国家を早急に作り上げるために、欧米諸
国の科学技術の導入を図りました。これは殖産興業政策の一環として政府の指
導によって強力な産業開発を行うためでした。このため、デ・レーケ、ファン・ドール
ン、リンドウ、ムルデルなどオランダ人技師招きました。「お雇い外国人」と呼ばれ
た彼らは河川工法の普及・指導にあたり、数多くの功績を残しました。 |
3 改修工事と人々 |
一列に並んだ土羽打ち作業
(建設省利根川下流工事事務所) |
改修工事の機械化の一方で、人力に頼る部分も多かったのです。築堤工事の場
合、広い作業場であれば土砂の運搬は蒸気機関車が用いられましたが、そうでな
ければ人力や牛馬を動力源とするトロッコが使用されました。いずれの場合も運ば
れた土をならし固める作業は人力でした。現場監督は内務省の者でしたが、作業
員は現場付近の農家などから多くの人が動員されました。
土を固める作業には「土羽打ち」「タコつき」があります。土羽打ちは堤防の斜面
部を固めるために5尺程の長さの土羽打ち棒を手に20〜30人が一列になって作業
を行います。タコつきは堤防上部などの平坦部を固めるために石ダコと呼ばれる円
盤状の石に網をつけたものを8人位で同時に引っ張り、弛めたときに落下する石の
自重により地面をつき固めます。
杭打ち作業は高いやぐらを組みますが、原理的にはタコつきと同じで、数人が共
同で綱を引いて行います。
このような作業は、堤防が強化された昭和30年代中頃まで続いていました。作
業中は単純な労働に飽きがこないように「土羽打ち唄」などの作業唄が歌われま
した。 |
佐原市篠原新田地先築堤
(国土交通省利根川下流工事事務所) |
4 改修工事の成果と流域の生活 |
川除普請争論裁許絵図
(埼玉県立文書館) |
利根川改修工事の成果は、まず流域の洪水に対する安全性を高めたことです。
そして連続堤の構築によってそれまで湿地や沼地が耕地として利用できるように
なりました。
ところで安全性の低かった頃の利根川流域では、どのような知恵を凝らして自分
たちの生命・財産を守っていたのでしょうか。かつての水害対策は、個人や地域間
において共同体意識が不可欠であり、そこから「輪中」や「領」などの水防共同体
が生まれ、屋敷地の盛土上に建てた「水塚」などの避難施設を所有していました。
しかし、上流側と下流側などで利害をめぐって対立する地域もあり、そうした紛争の
舞台となった「論所堤」が少なからず存在していました。
連続堤が完成したことにより、論所堤をめぐる紛争は終結したものの、住民レベル
における水防意識の必要性は現在もなお変わりありません。 |
展示協力者
(敬称略)
株式会社地域開発研究所 北川辺町教育委員会 国土交通省関東地方建設局(江戸川工事事務所、利根川下流工事事務所、利根川上流工事事務所) 国土交通省近畿地方建設局淀川工事事務所・淀川資料館 国立公文書館 埼玉県立文書館 下総町教育委員会 下総町立歴史民俗資料館 庄和町教育委員会 千葉県立大利根博物館 利根地固め唄保存会 利根町教育委員会 利根町立歴史民俗資料館 流山市立博物館 日本煉瓦製造株式会社
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