イソギンチャクとクマノミ

  おそらく,多くの人は、クマノミがイソギンチャクを頼って生きている姿をテレビや写真、水族館などで見たことがあると思います。世界でクマノミは28 種類が知られており、日本からはその内の6 種類が報告されています。これら全ての種類が、ほぼ一生をイソギンチャクと共に送ります。クマノミは,卵さえイソギンチャクのすぐ下に産み付けます。

産み付けられたクマノミの卵
サンゴイソギンチャクの脇に産み付けられたクマノミの卵

  クマノミの体は決まって赤っぽい地に、白いバンドが入っています。これはイソギンチャクの中に入ったときに、よいカモフラージュになるのかもしれません。クマノミには、それぞれ好みのイソギンチャクがあるようで,種類によって利用するイソギンチャクが大体決まっています。クマノミ以外にも、ミツホシクロスズメダイなど、幼魚のときだけイソギンチャクを利用する魚もいます。
 さて、利用されるイソギンチャクの方ですが、現在約11種がクマノミ類に利用されるイソギンチャクとして知られています。これらの種類は、いずれも褐虫藻を持ち大型になるイソギンチャクです。イソギンチャクの方は、クマノミが近くにいることによるメリットがあるのか? という問いに対しては、いろいろな説があります。実際に野外で、イソギンチャクからクマノミを取り除いたら、イソギンチャクは死んでしまった、という観察例もあり、イソギンチャクはクマノミのおかげで外敵を気にすることなく、一杯に体を伸長させることができ、その結果、褐虫藻が活発に活動できる、と考える研究者もいます。しかし、クマノミに利用されることもありますが、単独で生活していることもあるイソギンチャクもいるので、イソギンチャクに特にメリットは無い、と考える研究者もいます。「共生関係」の研究というのは,意外に困難なことが多いのです。
 房総半島の館山では、夏から秋にかけてクマノミの仲間のクマノミ(なんだかややこしい)が、サンゴイソギンチャクにくっついているのを見ることができます。冬になるとクマノミは寒さのために死んでしまいますが、イソギンチャクの方は特に変わりもないので、少なくともこのサンゴイソギンチャクにとっては、クマノミはいなくても構わないようです。

イソギンチャクとクマノミの共生例

サンゴイソギンチャクとクマノミ

シライトイソギンチャクとクマノミ

シライトイソギンチャクとハナビラクマノミ

サンゴイソギンチャクと
クマノミ(千葉県館山市)

シライトイソギンチャクと
クマノミ

シライトイソギンチャクと
ハナビラクマノミ

センジュイソギンチャクとカクレクマノミ
ハタゴイソギンチャクとカクレクマノミ

サンゴイソギンチャクとハマクマノミ

センジュイソギンチャクと
カクレクマノミ

ハタゴイソギンチャクと
カクレクマノミ

サンゴイソギンチャクと
ハマクマノミ