陸から海へ |
ヒゲと歯 |
ヒゲクジラの仲間には、歯がないかわりに、上あごの内側に、たくさんのヒゲがあります。このヒゲは、歯が変化したものでも、体毛でもありません。 これは、ヒゲクジラの仲間にだけある特別な器官です。ヒゲは、皮膚が爪のような板になり、その先が細長く何本にも分かれたものです。この板をヒゲ板といい、ヒゲ板の枚数や形は、クジラの種類によって異なります。 口の中では、ヒゲ板が並び、細長い房毛が互いに重なってザルのようになっています。このヒゲ板を使って餌をこし取って食べます。その取り方は、次の三つの方法に分けることができます。 |
一口で 一つめは、餌とともに大量の海水を口にふくみ、ヒゲ板の間から海水だけを吐き出す方法です。シロナガスクジラやミンククジラ、ザトウクジラなど、ヒゲクジラの仲間の多くが、この方法で餌をこし取ります。 この方法は、一度に大量の海水を口にふくむため、のどもとからへそにかけて延び縮みする畝(うね)と呼ばれるヒダがペリカンの口のようにふくらみます。一口の海水の量は、体長約12mのザトウクジラの場合で、約55トンにもなります。 |
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泥ごと 二つめは、口で海底の泥や砂を吸い込んで、ヒゲ板の間から海水と泥や砂だけを出し、餌をこし取る方法です。漁師さんがカゴのついた熊手で砂の中の貝を取るのに似ています。この方法で餌をこし取るのは、コククジラだけです。 コククジラのヒゲ板は、幅が狭くて厚く、房毛も1本1本が太く丈夫にできています。そして、なぜだかわかりませんが、餌を泥ごと吸い込むのは、必ず口の右側です。しかし、左右のヒゲ板には差がなく、泥や砂は両方から吐き出します。 |
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餌だけ 三つめは、口を開けたままでゆっくりと泳ぎ、中に入った水がヒゲ板の間を通り過ぎて外に出ていく際、細長い房毛で小さな餌をこし取る方法です。ちょうど、私たちがタモ網で魚を取るようなもので、セミクジラやホッキョククジラがこの方法で餌をこし取ります。 この方法を使うセミクジラの仲間は、水をこす面積を大きくするために、体の長さの1/3もある大きな口と、下あごにまでとどく長くて弾力性があるヒゲ板を持っています。 |
ハクジラの歯![]() |
ハクジラの歯の数は、上下合わせて200本以上あるものから下あごに2本のものまで、種類によってさまざまです。歯の数は、餌の取り方と関係しており、数が多い種類は、かみついて餌を捕まえるのに対し、数が少ない種類は、歯を使わず、吸い込むようにして餌を捕まえます。 |