アルフォンス・ミッシャ図案「Dessus de coussin」1900年
出典:『1900年のパリ展』パリ市立プティ・パレ美術館 2014年図録より

 

■ 日本の出品作品について

 日本の美術作品は、ヨーロッパ諸国に比べて細部表現にこだわる半面、たとえば人物全体への注意が十分でない。日本に戻ってこういうことを話したら、外国びいきだと周りは相手にしないだろう、などと記しています。
 6月には、コダック社のカメラを購入しました。カメラ、フィルム、現像用具など付属品一式で値段は300フランでした。スーツを一揃い誂えた料金は120フラン、一か月の生活費は、宿屋への支払い分を除き100フラン程ですので、写真には強い思いを持っていたと言えます。

 5月、博覧会に出品した日本の美術品への感想を、日本に居る正岡子規(まさおかしき/俳人、歌人、国語学研究者)宛ての書簡で記しました。浅井と子規は、東京根岸の御近所で、浅井は子規にデッサンを、子規は浅井に俳句を教えるなど、親しい仲でした。
子規が刊行した雑誌『ホトトギス』*に、次の一文を寄せました。

日本の美術は、工芸家の通弊として、大体の組織甚だ不注意にして、細かき筆遣い細かき仕事を自慢して、女の頭の髪の毛の線がきとか、象牙彫りの魚の鱗とかいふ者に骨折りて四畳半の座敷で賞翫(しょうかん:その良さをたのしむこと)せんとするものを、五間(9.09m)や六間離れて見ては何が書きあるや更にわからず。国帰りてこんな悪口をきいたら、外国に行て年月も立たぬうち外国贔屓になりて本国をくさす不届物とて人は相手にせざるならん。

*『ホトトギス』第3巻第9号 明治33年7月10日刊