柏市花前1遺跡


前期前葉(黒浜式期)の竪穴住居跡が9軒調査されています。いずれも隅丸方形の平面形で、8軒の竪穴住居跡内の覆土中に貝層が堆積していました。特に、103竪穴住居跡内には全面に貝層が堆積し、多くの遺物が発見されています。ハマグリ製の貝刃もこの住居跡から出土しています。関山式の文様構成を引き継いでいないことから、若葉台遺跡よりやや新しい時期と思われます。

黒浜式期の竪穴住居跡覆土中に形成された貝層から、当時の古鬼怒湾で行われた生業の一端をうかがうことができます。

一方、前期後半の浮島式土器を出土した竪穴住居跡は2軒のみで、この時期の2軒の竪穴住居跡には貝層が伴っていませんでした。

103号竪穴住居跡の縄文土器は、全体的に円筒状の形をし、全面に単節縄文を密に施しています。口唇部には指頭による圧痕が加えられ、小さな波状を形作っています。118号竪穴住居跡例は4単位の緩やかな口縁部を作り、器面全体に貝殻の縁を使った文様をまばらに加えています。007号竪穴住居跡出土の縄文土器は、口唇部に細かい竹管工具によるキザミがあり、胴部には貝殻の縁による波状の文様を施しています。