柏市花前1遺跡


本遺跡は、北東側に利根川を望む比較的広い台地上に位置しています。発見された奈良・平安時代の遺構は、竪穴住居跡25軒、掘立柱建物跡11棟などです。集落の出現は8世紀前半で、9世紀中頃~10世紀前半に集落規模が大きくなり、11世紀に入る頃には台地上から集落が姿を消しています。後述する花前2遺跡も同じような集落変遷をたどっており、製鉄が盛んに行われた時期が花前1遺跡の集落が拡大する時期とほぼ重なっていることも、両遺跡の関連性を考える上で重要な点と思われます。

この遺跡からは、小鍛冶跡などの鉄づくりに関連する遺構は見つかりませんでしたが、総数1,818点にも及ぶ多量の鉄滓が出土しています。その中では、鉄分の含有量が多いものが全体の6割を占めており、意図的に選別された可能性が高いと考えられています。さらには、鉄素材や鉄づくりの工具であるタガネ、折り曲げられたり磨り減った刀子が多く出土していることなどから、鉄器の再生産が行われたと想定されます。

本遺跡は、花前2遺跡との関係が認められますが、大きな違いは花前1遺跡のみに掘立柱建物跡が存在していることです。小形の建物の中には総柱の倉庫と思われる施設も含まれ、弧を描くように配置されています。一方、小さな建物群の西側には、3間×3間と2間×4間の比較的大形の建物が確認され、倉庫とは異なった機能をもつ建物と思われます。花前2遺跡を含む鉄づくりや鉄製品を管理・収蔵する役割を担った建物群かもしれません。