鍛冶屋「夷隅屋」


 鍛冶屋は、刃物などの鉄製品を製造販売、修理を行う職人です。その中でも、農具、漁具、生活用具などを作る鍛冶屋は「野鍛冶」と呼ばれ、かつては日本各地に数多くいました。ほとんどが親子や親方と弟子などが小規模に経営し、客の注文に応じて作りました。そのため、使う人の用途に合わせて、重さや大きさ、長さなど使い勝手よく製作します 。


屋号   旧夷隅郡は、鍛冶屋の材料となる砂鉄を多く産することから、この名前を付けました。

建物の特徴  切妻瓦葺屋根、間口3間半、奥行き3間の造り。左半分と右手前が土間になっており、フイゴや火床(ホド=炉)がしつらえてあり、鍛冶屋の作業をする場所です。右奥が板の間になっていて、この部分には天井がついています。モデルは成田市荒見にあった野鍛冶の作業場です。

店先の展示  大砥石 刃物の削りなどのために、足でこいで大きな砥石を回転させて使いました。現在は、石の一部が欠けてしまったため回りません。
         縦万力 ヤスリ掛けなどに使い、明治時代から使われるようになりました。
         商棚  鎌などの商品を飾っておく棚です。
         鞴   火床に風を送る道具で、押しても引いても送風できる仕組みです。
         火床 炭やコークスなどで火をおこし、地金や鋼を熱します。
         金床 作業台
         わきふね 火入れの時などに使う水が入っています。
         はし・槌 熱した地金や鋼を挟んだり、叩きます。用途に応じて自作します。
         炭   鍛冶屋では、火力の強い松炭を主に使います。


鍛冶屋の一口メモ

鍛冶屋の商い  夷隅屋は、野鍛冶を想定したものです。野鍛冶は、夫婦や親子、あるいは親方と弟子といった小規模の家内工業として営まれてきました。近隣の金物屋からの注文を受けたり、近所の農民の農具の注文に応じて製品を作りました。鍬ひとつにしても、用途に応じ、使用者の使い勝手に応じて製作しました。

鍛冶屋の生活  朝早く起きて仕事を始め、焼き入れなどの作業を行います。仕事場は、火の加減を見るために、薄暗いのが普通でした。大物は一人で作業を進めることが難しく、向槌を必要とします。
 弟子の時代は、炭割やフイゴ吹きなどを最初に覚えなければなりませんでした。また、年の初めには、初物作りとして技術の向上を願い、生鉄を用いて和釘や鎌などの小物を作り、仕事場の神棚に供えました。さらに年末にはフイゴ祭りを行い、仕事場を清め、神棚に供膳し、一日骨休めをしました。


戻る