紙の店「平群屋」
江戸時代、房総地方では紙の専門店はなく、紙とともに大福帳などの帳面や雑貨などもあわせて販売していました。また、紙の販売店では、紙を漉くことはありませんでした。紙漉きは、古代より房総のどの地域でも行われましたが、明治の頃には、夷隅郡、安房郡、東葛飾郡などで生産していました。しかし、その後、生産地は減少を続け、高度成長期には、県内から姿を消していきました。
屋号 安房国平群郡(へぐりぐん)に由来します。平群郡は、古くから紙漉きが行われた地域で、南房総市富山の天神社には、地元産の和紙に描いたと言われる中世の絵巻物が残っています。
建物の特徴 切妻瓦葺屋根、間口4間、奥行き3間の2階建て町家造り。具体的なモデルとなった建物はありません。
店先の展示 大八車 紙が入った荷を運ぶのに使いました。
飾荷 江戸時代の絵図から再現しました。紙が入っていた空箱にコモを巻き、重ねて看板にしています。
棚および和紙 産地や江戸の問屋から卸した紙を販売するための棚です。紙は、半紙の約2倍の大きさ(西の内判と呼ばれます)でした。
軒暖簾(のきのれん) 藍染に「紙屋」「かミや」と白く染め抜いてあります。
漉槽(すきぶね) 中に水をはり、和紙の原料とネリ材を入れて紙漉をするための水槽です。
馬鍬(まぐわ) 和紙の材料を混ぜ合わせるための木と竹でできた鍬です。
紙床台 漉槽で漉いた紙を置く台です。
貼板 水をしぼった和紙を貼り、乾かします
紙の店一口メモ
紙の店とは 紙の専門店は、江戸にはありましたが、千葉県内にはなかったようです。千葉県の場合、紙は雑貨等と一緒に販売されていました。また、紙の仕入れ先は江戸や地方の和紙生産地です。
どのように紙を売ったか 江戸時代の絵図などを見ると、店内の棚に紙が積み上げられています。おそらく、客の希望する紙を取り出して販売していたのではないかと思われます。