菓子の店「あまはや」


 菓子屋の一日は早朝、「朝生(あさなま)」とよばれる大福や草餅など、その日しか食べられないお菓子を作り、そのあと「きんつば」「どら焼き」や日持ちのよい「羊羹」や「あめ」「瓦煎餅」などを一日かけて作るというものでした。店先にはこれらの菓子が菓子箱や菓子箪笥に並べられ、注文がくると袋や経木に包んで売られました。また明治期、西洋菓子の人気が高まると菓子屋でもビスケットやスポンジケーキのようなお菓子が作られ、和菓子と合わせて売られるようになりました 。


屋号   天羽郡(現富津市付近)に由来します。「あま」を「甘」にかけて、菓子の店の屋号としました。

建物の特徴   切妻瓦葺屋根、間口3間、奥行き3間の木造2階建て。外観は千葉県香取市佐原の老舗を摸して作られています。店先には菓子類を並べ商いをした場所と菓子作りの様子を見学していただくためのコーナーが設けてあります 。

店先の展示   菓子箪笥 干菓子を入れます。菓子が湿気ないように桐でできています。
          菓子箱  大福やきんつば、羊羹、しおがま、おこしなどが入っています。
          せいろ  小麦まんじゅうが入っています。
          軒のれん 「あまは屋」の屋号と家印が染め抜かれています。
          屋根看板 外観同様佐原の老舗の看板を摸したもの作りとなっており、「御菓子製所」「あまは屋」と書かれています。


菓子の店一口メモ

 菓子屋の商い   生菓子、干菓子、飴、煎餅、駄菓子などの中から、店によって重きを置くものが違い、それが各店の特色となっています。また、自分の店だけで作れるものには限りがあるため、例えば自分で干菓子や生菓子を作り、煎餅や飴、駄菓子は他の店から仕入れるというようにして種類を増やすことも多くありました。
 「あまは屋」は蔵造りの店構えからも、屋根看板や軒暖簾の格調からいっても、生菓子や干菓子に重きを置いた店と考えた方がよいと思います。

菓子屋の生活  菓子屋は朝が早い。生菓子の中でも「朝ナマ」といわれる大福・団子・饅頭などは、朝のうちに作ります。これは、必ずその日のうちに売り切らなくてはならない、日持ちのしない菓子です。朝ナマを作り終わって一息つくと、干菓子や飴などにとりかかります。練切などは、集中力が必要なため、夜に作る場合もありました。
 一年を通じてみると、概して寒い時期に忙しく、夏は暇になります。夏は菓子が売れなくなるからです。また、人生儀礼や年中行事に結び付いた菓子は多く、結婚式や葬式などの引き出物や三つ目のぼた餅、初節供や七五三の配り菓子などを頼まれると、書き入れ時となり、徹夜となることさえありました。
 寺社の門前で参詣客に土産の菓子を売る菓子屋には、かなり安定した売り上げがありました。また、今はあまりお供物の菓子は見られなくなりましたが、一昔前は寺の得意となってお供物の菓子を納める場合もあり、祭りに特別な注文が入ることもあったことから、菓子屋にとって寺社はないがしろにできない存在でした。


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