お茶の店「山辺園」


 お茶の店に入ると、客は上がり框に腰かけ、売り子がくるのを待ちます。売り子は試し飲みのお茶をいくつかいれ、客にすすめます。気に入ったお茶が見つかると客は好きな量を注文します。売り子は秤で注文のお茶を量り、袋に詰めて客に渡します。 かつてお茶の販売はこのようにして行われました。店には何種類ものお茶を入れた茶壺がところ狭しと並べられ、かたわらには帳場や湯を沸かしておくための火鉢が置かれていました


屋号   山辺郡は、東金付近の旧郡名で、幕末から明治にかけて、このあたりは主な茶の産地だったことから、郡名から屋号をとりました。なお、○○園という呼び方は、明治初期からお茶屋の屋号として使われ始めています。

建物の特徴   切妻瓦葺屋根、間口4間、奥行き3間の2階建て土蔵造り。両脇の外装は、黒漆喰仕立て。2階には土戸、チチなどを配し、重厚な造りとなっています。具体的なモデルとなった建物はありません 。

家印   「 」。読み方は「かねとまる」です。「金留る」の掛け言葉で、香取市に江戸時代からあるお茶屋の家印を参考にしました。

店先の展示  切り抜き看板(下げ看板) 板を茶壺型に切り抜いたものに「茶」の字と店名がはいっています。絵画資料を参考に再現しました。
         軒のれん  家印として「 」がつけられています。香取市佐原の老舗の家印を模しています。
         帳場 帳付けや勘定をする場所です。
         火鉢・鉄瓶 客に茶を試飲させるためのものです。
         茶壺 種類別にお茶を入れ、店先に並べていました。
         茶甕 素焼きの甕で、茶の保存用に用います 。
         火入れかまど・焙炉 かまどは葉を蒸すため、焙炉は葉の乾燥に使用します。
         箕  乾燥させた葉を集めて、焙炉から取り出すために使用します。
         茶篩(ふるい)  出来上がった茶を選別するのに使います。


お茶の店一口メモ

お茶屋の商い  お茶屋では、茶葉を販売しました。様々な等級の煎茶や番茶、また、抹茶を売ることもありました。小売りと同時に地方へ卸に出歩くことも多くありました。
 茶を保存する時は、等級や産地別に素焼きの茶甕に入れ、渋紙で蓋をして涼しい所に置きます。そして、これらの茶葉を自分の店でブレンドし、それぞれ銘柄を名づけて茶壺に入れ、店先に並べました。

店先の様子  火鉢には常にお湯が沸いていて、いつでもお茶が飲めるようになっていました。客が茶を買うときには、上り框に腰掛け、供えてある煙草盆で煙草をくゆらせながら、店の者が勧める茶を試し飲みして、ゆっくりと選んだようです。そして、気に入った銘柄のお茶を好きな分量だけ注文します。店の売り子は、並んだ茶壺から指定の茶を取り出し、天秤秤で量って紙袋に詰め、こよりで口を縛って客に渡しました。


戻る