畳の店「安房屋」


 畳屋の店先は、畳職人が畳を作り上げる仕事場です。店先では、畳の販売が行われることはありません。この安房屋も、作業場として再現してあります。畳屋は、畳床を作る仕事と、畳表を張る仕事があります。しかし現在では、ワラ製の畳床が少なくなり、畳表の張替えが主な仕事になっています。


屋号   安房屋という名称は、明治時代から昭和40年代まで、安房地方で畳表の原料であるイグサが盛んに作られたことに由来します 。

建物の特徴  切妻瓦葺屋根、間口3間、奥行き3間の平屋建て町家造り。部屋の脇に階段があり、屋根裏に続いています。具体的なモデルとなった建物はありません。

店先の展示   畳台  畳表を張る時に、畳床を乗せて作業をします。
         敷板  畳台を置いてある板を敷板と呼びます。
         畳棚  畳床を置いておくための棚です。
         定規類および畳  畳の寸法取りに使う小ガネ、大ガネと呼ばれるモノサシや、畳表のヘリを切るために使う定規などと、丸イグサを用いて織った備後表を縫い付けた縁付きの畳と、三角イグサを織った琉球表を縫い付けた縁なしの畳が展示してあります。
         徳利  畳表の張替え時の霧吹きに使用します。
         展示コーナー  焼香台の前に敷く敷物である四天付き拝敷や、寺院で広く使われる礼盤などの特殊畳、畳床の素材を見せる展示などを行っています 。


畳の店一口メモ

畳屋の仕事  畳床作りと畳表を張る仕事があります。
         畳床  1畳分に必要なワラの量は、80束~100束で、普通30㎏の重さがあります。良質のワラだと35㎏になります。昔は寒の風を通すとワラの芯まで乾くといわれ、寒を越してからワラを使用しました。昭和30年頃から機械による床作りが行われるようになりました。ワラは普通3段、良いものは5段を縦横に並べて製作しました。
裏返し  表の裏返しは、手縫いの場合で1人で8畳分作業すると一人前に見なされました。また、新床に畳表を取り付ける場合は、通常で5畳分、框に板を入れる場合は4畳分を作業するのが標準でした。機械が導入されはじめたのは、昭和30年頃で、使用人を10人雇い、1日100畳ほどの表替えを仕上げました。

畳屋の生活  一般的な畳屋の一日の生活は、おおかた朝の8時半には仕事が始まり、夕刻に終わりました。家で仕事をする居職と、畳表替えをする客の家へ行って仕事をする出職の併用でした。休みは、祭り前・お盆前・年末年始と藪入り(1月15日、16日)くらいでした。

畳屋の年中行事  仕事始め 1月2日の仕事始めに、糸筒を作り神棚に供え、一年間の仕事の繁盛と安全を祈願しました。親方に年始回りをし、1月7日までのあいだに神詣でをしました。
太子講  畳屋では聖徳太子を祀っており、1月末と5月、9月の年3回に太子講を行いました。

職人の修業  代々の家業を継ぐ場合と、小学校を卒業すると同時に畳屋に住み込んで弟子入りし、技術を習得していく場合がありました。弟子入りする場合、5~7年以上は住込みで仕事を覚えていきます。修業の最初は、オオデといって、床のシンを編む仕事をします。4~5年は親方について仕事をし、この間は、肌で仕事を覚えます。年季が明けてからは、手間稼ぎといって、泊まり込みで親方の仕事を手伝いました。


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