市川市国府台

 撮影年月日:1940年代-1980年代

 撮影場所:千葉県市川市国府台里見公園

国府台は江戸に近いこともあり、江戸川にのぞむ市川市の国府台は江戸時代から観光の名所でした。写真の奥の高台にある里見公園付近から江戸川を望む風景は、冨士三十六景「鴻之台とね川」(広重)など浮世絵にも繰り返し登場します。注目して欲しいのは、丘の稜線にシルエットでみられるマツです。現在このあたりは、潜在植生であるシイ・カシ林(常緑のドングリの木)にもどっていますが、かつて千葉県はほとんどが人為的な二次林であるマツ林におおわれていました。マツは建築材として利用され、またその薪炭は、左手に見られる帆船などを利用し、大消費地である江戸に運ばれたのです。利用価値が高いということで房総ではマツが積極的に植栽され、江戸時代を中心に房総のほとんどがマツ林となっていたのです。そんな歴史も伺える写真です。

撮影:吉野章郎氏