第4章 房総の鯨

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 三方を海に囲まれた房総半島には豊かな海洋環境があり、クジラの種数も豊富です。第4章では、房総半島にどのようなクジラがやってくるのかご紹介します。

 房総半島は東京湾の浅い内湾から、水深数千メートルを超える太平洋のような外海までさまざまな海に囲まれており、沖合では暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかり合っています。そのためクジラの種数も豊富で、世界に見られる約90種のうちの35種が記録されており、これは日本全国で最も多い記録となっています。スナメリやコククジラのような浅い海を好むものから、アカボウクジラやマッコウクジラのような深海まで潜るものまで確認されています。また、房総半島の沖合が生息地の南の端や北の端になっている種もおり、ネズミイルカやイシイルカといった寒い海を好む種と、ツノシマクジラやカズハゴンドウといった温暖な海を好む種の両方が見られるのも特徴です。

 クジラは生きたまま海岸に打ち上がったり、死体が海岸に漂着(ひょうちゃく)することがあり、この現象を「ストランディング」と言います。その原因は多くの場合はっきりとはわかっていませんが、千葉県ではこのような現象が年間20件ほど報告されています。スナメリのような小さな種類から15メートルを超えるような大型種や珍しい種が記録されており、ときには何十頭ものクジラが一度に打ち上がることもあります。たとえば、2006年には千葉県一宮町の海岸におよそ100頭ものカズハゴンドウが座礁(ざしょう)し、2013年には九十九里浜に1ヶ月で60頭のカズハゴンドウが座礁した記録があります。珍しい種の代表はイチョウハクジラで、2021年に27年ぶりに白子町で打ち上がっているのが発見されました。

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