第5章 最新の鯨類学

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 クジラは謎だらけです。海中に生息するため観察も難しく、死んで打ち上がった個体しか知られていない種もいるほどです。研究者はクジラに秘められた謎を解き明かそうと、さまざまな角度から日々研究を行っています。

 近年、クジラの新種発見が相次いでいます。2019年に、これまでツチクジラと認識されていたクジラのうち、オホーツク海周辺に生息する集団が体格や体色、頭の骨の形や遺伝子の違いからクロツチクジラという新種として発表されました。また、ニタリクジラとされていた一部の集団が別種であるという報告も相次いでいます。2003年に体の小さな集団が新種のツノシマクジラとして記載され、沿岸型の集団はカツオクジラという別種になりました。この2種については、標本や情報が少なく、わからないことがたくさんあります。千葉県からは2頭のツノシマクジラの記録があり、そのうちの1体は全身骨格が保存されています。この骨格もツノシマクジラの謎の解明に貢献しています。

 日本のスナメリには5つの集団があるとされてきました。ところが近年の研究で、これまで仙台湾から東京湾にかけて生息するスナメリの集団の中に、東京湾内に生息する固有の集団が新たにいる可能性が指摘されています。残念ながら、東京湾のスナメリは個体数が少なく観察例もとぼしいため、その実態がよくわかっていません。時折、東京湾の千葉県側でも座礁(ざしょう)個体が見つかることがあり、この中には生まれたばかりと思われる赤ちゃんも含まれています。ということは、東京湾でスナメリが繁殖している可能性が考えられます。このような数少ない手がかりを確実に集めて研究を進めることが、地味な方法ですがクジラの謎を解き明かす第一歩になるのです。

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