淡水生地衣類図鑑
3.痂状地衣

C群:共生藻は緑藻,子器は被子器

この群の痂状地衣を外部形態だけから同定するのは,ごく一部の特徴的な種を除けば,とても難しい.確実な同定をするには,子器の切片を作製し,観察する必要がある.
1a. 子嚢層内に緑藻(子嚢層内共生藻)が分布する・・・(あ)へ
1b. 子嚢層内に緑藻は分布しない・・・2へ

 

2a. 子嚢の間に子嚢層内菌糸系が分布する・・・3へ
  2b. 子嚢の間に子嚢層内菌糸系はなく,周糸のみがある・・・(え)へ
3a. 子嚢層内菌糸系は分枝癒合する側糸状体・・・・・・(い)へ
3b. 子嚢層内菌糸系はほぼ単一の側糸・・・・・・(う)へ
(あ)子嚢層内に緑藻(子嚢層内共生藻)が分布する
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A B C
(い)子嚢層内菌糸系は顕著に分枝癒合する,側糸状体
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A    
(う)子嚢層内菌糸系は概ね単一の側糸
  4a.子嚢の先端部の肥厚は顕著・・・5へ
  4a.子嚢の先端部はほとんど肥厚しない・・・7へ

5a.

子嚢胞子は石垣状多室(縦横の隔壁がある)・・・7. Strigula australiensis
5b. 子嚢胞子は並行多室(隔壁は横のみ)・・・6へ
  6a.地衣体は暗緑色,子器は小さく( 0.15~0.25 mm),子嚢胞子は2室・・・8. Strigula minutula
 

6b.地衣体は淡緑褐色から淡褐色,子器は大きく(0.25~0.6 mm),子嚢胞子は8室・・・6. Strigula aquatica

7a. 子器は淡褐色で扁平(わずかに突出する)・・・5. Porina ulceratula
7b. 子器はほぼ黒色で半球形からほぼ球形・・・8へ
  8a.子嚢胞子は4室,長さ14~27 μm, ・・・3. Porina chlorotica
  8b.子嚢胞子は6~8室,長さ27~42 μm・・・4. Porina guentheri
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A B  
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A B  
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A B  
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A B C
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A B C
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A B C
(え)子嚢の間に子嚢層内菌糸系はなく,周糸のみがある
9a.

子嚢胞子は隔壁がある(2室,並行多室,石垣状多室)・・・10へ

9b. 子嚢胞子は隔壁がない(単室)・・・13へ

 

10a.子嚢胞子は石垣状多室,子器は黒色・・・9. Agonimia deguchii
  10b.子嚢胞子は2室か並行4室,子器は褐色・・・11へ
11a. 地衣体は緑色の,粉末状のゴニオシストからなる・・・11. Psoroglaena japonica
11b. 地衣体は灰白色で,概ね連続する・・・12へ
  12a.子嚢胞子は並行4室・・・12. Thelidium izuense
 

12b.子嚢胞子は2室・・・13. Thelidium rehmii

13a. 地衣体には,円形のゴニオシスタンジア(粉芽塊のようなもの)を生じる・・・17. Verrucaria craterigera
13b. 地衣体には,ゴニオシスタンジアを生じない・・・14へ
  14a.地衣体は微小な鱗片(繰り返し分枝する)からなる ・・・21. Verrucaria izuensis
  14b.地衣体に微小な鱗片はなく,連続し平滑・・・15へ
15a. 子嚢胞子は長さ 14 μm以下・・・16へ
15b. 子嚢胞子は長さ 15 μm以上・・・20へ
15c. 子嚢胞子は長さ 12~16 μm,子器は顕著に裸出しほぼ球形,基部でくびれ,直径0.15~0.25 mm,黒,地衣体は目立たない・・・22. Verrucaria kiyosumiensis
  16a.地衣体に明瞭な黒点がある・・・10. Hydropunctaria rheitrophila
  16b.地衣体に明瞭な黒点はない・・・17へ
17a. 子嚢胞子は 11~14 × 5~7μm ,地衣体は緑がかるか褐色がかる・・・18へ
17b. 子嚢胞子は6~9 × 4~6 μm,地衣体は黒っぽい・・・19へ
  18a.被子器は顕著に裸出し,半球形からほぼ球形,直径0.2~0.4 mm ・・・16. Verrucaria capitulata
  18b.被子器は概ね地衣体に埋もれる・・・ 20. Verrucaria igii
19a. 被子器は半球形からほぼ球形,ふつう基部でくびれ,外殻は果殻を包む・・・27. Verrucaria takagoensis
19b. 被子器は半ば地衣体に埋もれるか,顕著に突出しほぼ半球形,あるいは低い円錐,基部はくびれず,外殻は側方に広がる・・・15. Verrucaria aquatilis
 

20a.地衣体はふつう厚く,区画化するか顕著に割れ,ゼラチン化しない・・・21へ

  20b.地衣体は薄いか中程度で,連続するかわずかに割れ,半ばゼラチン化するか全くしない・・・23へ
21a. 地衣体ははじめ微小な円盤からなり(地衣体周辺部で確認できる),後に集合し厚くなり,二次的に明らかに区画化し(割れ目は顕著),被子器は地衣体に埋もれ,暗色の基層は顕著に発達し,子嚢胞子は21~29 × 9~12 μm・・・24. Verrucaria nipponica
21b. 地衣体は区画 化するか(小円盤からなることはない),半ば区画化あるいは連続し,区画が互いに離れたとしても広くは離れない・・・
  22a.地衣体は淡い灰色(生時はしばしば青味がかる)か褐色で,外殻(あるいは暗色の基層)は地衣体の上部から明瞭に区別でき,地衣体内(切片)には暗色の顆粒は無い ・・・26. Verrucaria praetermissa
  22b.地衣体は淡褐色で,外殻(あるいは暗色の基層)と地衣体上部との境界は不明で,地衣体内(切片)には暗色の顆粒がある・・・28. Verrucaria yoshimurae
23a. 子嚢胞子の長さは概ね22μm以下・・・24へ
23b. 子嚢胞子の長さは概ね22μm以上・・・
  24a.被子器は裸出し,半球形からほぼ球形で基部はしばしばくびれ,直径 0.2~0.3 mm・・・25. Verrucaria nujiangensis
  24b.被子器は地衣体(あるいはイボ)に埋もれ,あるいは上部が裸出し,ほぼ半球形の場合には基部はくびれない・・・25へ
25a. 地衣体は連続し,褐色か 緑色,被子器はふつう裸出し(ほぼ半球形にまでなり),あるいは地衣体のイボに埋もれ,子嚢胞子は ハロを欠く・・・18. Verrucaria denudata
25b. 地衣体は連続し褐色か灰色,被子器は常に地衣体に埋もれ,子嚢胞子はハロで包まれる・・・19. Verrucaria funckii
  地衣体は半ばゼラチン化し,被子器は突出した地衣体のイボに埋もれ,子嚢胞子はハロを欠き,淡水生種・・・14. Verrucaria andesiatica
  ;地衣体はゼラチン化せず,被子器は円錐形(時に半球形)で,裸出あるいは薄 い地衣体をかぶり,子嚢胞子はハロに包まれ,半淡水生環境から非淡水生環境に出現・・・23. Verrucaria margacea
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※ このページの検索表は,以下の論文に掲載された検索表を一部改変したものを用いて作成.

Harada H. 2012. Taxonomic study on the freshwater species of Verrucariaceae of Japan (2). Genus Verrucaria. Lichenology 10(2): 97-135.[原田 浩. 2012. 日本産淡水生アナイボゴケ科地衣類の分類学的研究(2).アナイボゴケ属. Lichenology 10(2): 97-135.]