No.1702 2019/5/30(木)

 三島小学校の海抜表示


dummy

 きれいに刈り込まれた緑色の芝生と赤い屋根の校舎、天気のいい日には青い空とのコントラストが素敵な三島小学校(写真1)。最初に訪れた時に真っ先に目にとまったのは、校庭の片隅にある土地の高さを示す杭であった(写真2)。この杭は、教室博物館の前にある百葉箱の近くにあり、正面に「海抜九十八メートル」と書かれている。また別の側には(写真3)、「東経百四十度一分四十五秒」と水平位置を示す経度が記されている(緯度は書かれていないが)。杭はちょっと傾いており、ペンキもややうすくなっていて年代を感じさせる。明治時代に開校したという歴史の古い三島小学校ではあるが、さすがにそこまで古いものではないであろう。

dummy
dummy
写真1 三島小学校の校庭
dummy
dummy
写真2 三島小の海抜表示
dummy
dummy
写真3 経度の表示(緯度の表示はない)
dummy
dummy

 ところで土地の高さを表すとき、「海抜○m」という場合と、「ここの標高は○m」などという場合がある。海抜と標高は何を表しているのだろうか。まず標高については、日本では東京湾の平均海面を0mとし、そこから測って土地の高さを表したものである。標高は山の高さなどを表すときによく使われる。一方海抜は、近くの港湾の平均海面を基準とした土地の高さのことで、海に近い場所での表示(写真4)として用いるため(最近は津波対策や高潮対策など)、標高とは違う基準になっている。しかし同じ場所の高さが、標高と海抜で違う数字になっていたら混乱してしまうということで、離島などの一部を除いて、現在はどちらも東京湾を基準にした土地の高さで表しているようである(結局は同じ)。

dummy
dummy
写真4 埋立地の小学校にある海抜表示(千葉県習志野市)
dummy
dummy

 なお東京湾の平均海面からの高さを測るというのも、そう簡単ではないので、実際には東京の国会議事堂の前庭に設置された「日本水準原点(標高24.3900m)」から測量している。この日本水準原点を基準に、全国に水準点を作り、各地で高さを測ることが可能になっている。ただし大きな地震が発生すると土地が隆起したり沈降したりするため、水準原点の高さも微妙に変化する。原点を設置した当初(1890年)の標高は24.5000mだったが、1923年の関東大地震で地殻変動が生じ、24.4140mに改められ、さらに2011年の東北地方太平洋沖地震で沈降したため、原点標高は24.3900mに改正された。それに伴って各地の標高の値も変化するのだが、たいていは小数点以下の小さな変化なので、表示を変えるまでにはならない。
 説明が長くなってしまったが、三島小学校の高さの表示は「海抜」で表されている。海が近いわけではないのにと思うが、どこを基準にした値なのだろうか。まあ近隣の海といっても、同じ「東京湾」なのだからあまり違いはないであろう。いずれにしても三島小学校の校庭の高さは「海抜九十八メートル」、これは覚えておこうと思う。
 (八木令子)

dummy


ニュース一覧へもどる