No.073 2002/07/11(木)

 台風6号の落とし物


 7月10日の夜から11日の未明にかけて、台風6号が房総半島を縦断していった。最大風速30mを超える台風の直撃の爪痕を確認しようと山に入ってみた。

 しかし、拍子抜けするほど被害がなかった。崖崩れもない。倒木もない。いつものようにウグイスやヤブサメやオオルリがさえずっている。

 そんな山道で唯一みつけた台風の痕跡は、落下したたくさんの小枝だった。

 強風にあおられ、隣の枝とぶつかりあったりするうちにちぎれて落ちたのであろう。長さ20cm〜30cmくらいの小枝が大半であった。

 種類はじつに多様。アカマツ(上)、モミ(右)、スダジイ(右下)、コナラ(下)。

 共通点はどれも林の最上層をつくる高木であること。林内に生える低木の枝はほとんど落ちていなかった。

 落下した小枝からわかること。

 林の上面のことを林冠という。房総の山を遠くから眺めると、林冠は右の写真のようにまるで刈りそろえたようにスムーズだ。おそらく、林冠から飛び出した小枝は強い風が吹くとちぎれて落ちてしまうのだろう。

 「出る杭は打たれる」のと少し似ている。

 台風は山の庭師である。

 他の種を挙げてみると、

 ウラジロガシ、アカガシ、アラカシ、ヤブニッケイ、タブノキ、クスノキ、ヤマモモ、スギ、クリ、エゴノキ、ネムノキ、アカメガシワ、イタヤカエデ、オオモミジ、アズキナシ、ハリギリなどの枝が落ちていた。

 もう一つの特徴はツル植物が多かったことである。

 上記の高木の他に、マタタビ(左上)、ミツバアケビ(左)、ムベ、テイカカズラ、フジ、クマヤナギ、クズといったツルの枝や果実も落ちていた。

 林冠に達したツルもまた“庭師”のハサミにかかるのであろう。

(K)


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