No.394 2006/07/14(金)

 コマユバチに寄生された毛虫


dummy    ヨシハラ先生が奇妙な毛虫を持ってきてくれた。昨日、館山の洲崎でススキの葉の上にいるのをみつけたそうだ。毛虫はどうやらタケカレハというガの幼虫のようだが、とにかく異常である。体長7センチ弱の大形の毛虫の全身に白い突起がびっしりと生えている。毛虫が元気に動くのにあわせて白い突起はわさわさと揺れる。こんな毛虫はみたことがない。ルーペで観察すると、突起の長さは約5ミリ、太さは約2ミリで、先端に穴が空いていて中は中空。
   しばらく観察するうちに突然この突起の正体がわかった。白い突起はハチの繭だったのだ。モンシロチョウの幼虫に寄生するアオムシサムライコマユバチといハチがいる。モンシロチョウの幼虫を飼っていると、ある日、イモムシの身体からたくさんの小さなイモムシが出てきてやがて繭を作る。そんな光景をみてショックを受けた経験のある人もいるだろう。このように、コマユバチの仲間は他の昆虫の幼虫に寄生する。
   この毛虫についているのはコマユバチの1種の繭である。ざっと100以上もある繭はどれも中空なのですべて成虫が羽化した後らしい。アオムシサムライコマユバチの場合、繭を作る頃には寄主のアオムシは死んでしまうのだが、このコマユバチの場合には羽化した後も寄主の毛虫は生きている。これも驚きである。いったいハチの幼虫は寄主のどこを食べていたのだろう? 成虫になれるものかと思って寄主の毛虫を飼ってみたが、数日後にサナギにならずに死んでしまった。

(尾崎煙雄)

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 ススキ Miscanthus sinensis(イネ科)

 タケカレハ Euthrix albomaculata directa(カレハガ科)

 モンシロチョウ Artogeria rapae crucivora(シロチョウ科)

 アオムシサムライコマユバチ Cotesia glomerata(コマユバチ科)

 コマユバチの1種 Braconidae sp.(コマユバチ科)

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