No.924 2011/03/03(木)

 枯れたヒメコマツ


dummy  絶滅が危ぶまれる房総丘陵のヒメコマツの調査のため、まだ春浅い房総の山の奥に分け入った。そこで目にしたのは、白骨のような姿をさらすヒメコマツの枯死木だった(写真1)。この木は1年前には生きていたのだ。枝先にわずかに残った枯葉がそのことを物語る(写真2)。房総丘陵全域で83本しか確認されていない貴重なヒメコマツがまた1本減ってしまった。切り立った崖の縁に生えるこの木の根元にはヒカゲツツジが群生し(写真3)、幹にはマメヅタランが着生している(写真4)。ヒカゲツツジはヒメコマツと同様に冷涼な温帯の植物、一方のマメヅタランは分布の北限に近い南方の植物だ。そしてどちらもヒメコマツ同様に絶滅危惧種。房総丘陵の植物相の不思議を象徴する光景だ。そんな感慨に浸りながら、ひょいと崖の下をのぞくと、そこには若いヒメコマツの稚樹があった(写真5)。枯れた木の子孫だと思われる。うれしい一瞬であった。
 (尾崎煙雄)
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写真1
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写真2
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写真3
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写真4
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写真5
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 ヒメコマツ Pinus parviflora(マツ科)

 ヒカゲツツジ Rhododendron keiskei(ツツジ科)

 マメヅタラン Bulbophyllum drymoglossum(ラン科)

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