No.1280 2014/07/24(木)

 アリスアブ幼虫


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 清澄山系にて。猛暑の森で、地表に横たわった大きめの枯れ枝を動かしたら、下はアリの巣であった(写真1)。トビイロケアリと思われる。慌てて繭や卵を避難させる働きアリたちのただ中に、じっと動かない5ミリほどの丸いものがいる。ちょうど二つに割った大豆の片割れを伏せたような形だ。「もしや」と思って拡大してみると、果たしてアリスアブの幼虫であった(写真2)。図鑑でしか見たことがなく、いつか実物にお目にかかりたいと思っていた虫だ。名前もちょっと素敵な感じだが、キャロルの小説に出てくる「少女アリス」とは関係なく、「アリの巣」に居候するアブなので「蟻巣虻」。
 右往左往する働きアリと対照的に、動く気配はない。しげしげと見入ってもこれが虫の幼虫だとは思えない。しかし背面には整然とした細かな網目模様があって、自然の造形の一端を覗かせている。手に取ってみると、ちょうどグミキャンディのような質感。裏返してみたら、ようやくもぞもぞと動いたので初めて生きていることを確認できた。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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 トビイロケアリ Lasius japonicus(アリ科)

 アリスアブ Microdon japonicus(ハナアブ科)

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