No.1299 2014/10/24(金)

 キタキチョウ


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 よく見かける黄色いチョウ(写真)。翅を広げた横幅は4cmほど。これはキタキチョウという種なのだが、古い図鑑には「キチョウ」という名で載っている。観察会などで、「キタキチョウです」と紹介すると、参加者の方から「え? キチョウじゃないんですか?」と聞き返されることがしばしばある。

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 この仲間は本州から南西諸島にかけて分布していて、かつては全部まとめてキチョウという種として扱われていた。しかし、専門家の調査によって従来のキチョウには2つのタイプがあり、本州から南西諸島まで分布するタイプと、南西諸島にのみ分布するタイプがあることが明らかになった。この2タイプは見た目での識別は難しいが、詳細な研究の結果、両者の違いは明らかで、別種とみなされることとなった。以後、南西諸島にのみ分布する種を「キチョウ(ミナミキチョウ)」と呼び、本州〜南西諸島に分布する種には「キタキチョウ」という新たな名が与えられた。そして、南西諸島のみに分布する種を「キチョウ」と呼ぶこととした。あるいは、キタキチョウに対比してミナミキチョウともいう。つまり、日本産のチョウが1種増えたわけだ。この研究結果が発表された2005年以降、新たな図鑑などでもキタキチョウという記述が使われるようになっている。このように、身近な生物でも1種と思われていた存在が複数の種に分割されることはじつは珍しくない。自然誌研究の奥深さを教えてくれるエピソードである。
 (尾崎煙雄)

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 キタキチョウ Eurema mandarina(シロチョウ科)

 キチョウ Eurema hecabe(シロチョウ科)

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