No.1347 2015/04/18(土)

 どんぐりの花


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 どんぐりを見たことがないという人は少ないと思う。しかし、「どんぐりの花を見たことがありますか?」と尋ねると、「えっ!どんぐりの木に花が咲くんですか?」という反応が返ってくることがよくある。もちろんどんぐりの木にも花は咲く。4〜5月はどんぐりの花盛りだ。
 ところで、「どんぐり」という名の植物はない。広い意味では、ブナ科の樹木の果実を総称して「どんぐり」と呼ぶ。写真1は代表的などんぐりの1種であるクヌギの花だ。若葉の下に垂れ下がった多くのひも状のものがクヌギの雄花序だ。雄花序とは雄花の集まりのこと。拡大してみると細長い軸に2〜3ミリの雄花がたくさん着いているのがわかる(写真2)。このように、どんぐりの雄花は色こそ地味だがけっこう目立つ。

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写真1
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写真2
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 では雌花はどこかというと、これが難しい。クヌギの雌花は若葉の付け根に1つずつ咲く(写真3)。大きさは2ミリほどしかない。雄花の花粉が飛んできてこの雌花に受粉し、やがてどんぐりに育つのだ。
 しかしクヌギの場合、この雌花がどんぐりになるのに1年半を要する。つまり、今咲いている雌花が大きなどんぐりになるのは今年の秋ではなく来年の秋だ。では、昨年の雌花は今どうなっているかというと、直径2〜3ミリの小さなふくらみでしかない(写真4)。昨年の4月に咲いた雌花は、1年後の今もほとんど生長していないのだ。この幼いどんぐりがこれから半年で急に大きくなり、10月には立派などんぐりに育つ。
 どんぐりの仲間には、クヌギやアカガシのように2年かけてどんぐりが育つ種類と、コナラやシラカシのように、開花したその年の秋にどんぐりになる種類がある。どんぐりの花にも目を向けてみてほしい。
 (尾崎煙雄)

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写真3
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写真4
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 クヌギ Quercus acutissima(ブナ科)

 アカガシ Quercus acuta(ブナ科)

 コナラ Quercus serrata(ブナ科)

 シラカシ Quercus myrsinifolia(ブナ科)

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