No.1374 2015/07/25(土)

 イノシシとカヤの根


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 森の中で根を掘り起こされた木をみつけた(写真1)。針葉樹の1種、カヤの木である。幹の直径5センチほどの若い木だ。掘られてからあまり日が経っていないようで、枝先の葉はまだ青々としている。
 おそらくこれはイノシシの仕業だと思われる。若木とはいえ、木の根を丸ごと掘り起こすことができる動物は、この山ではヒトかイノシシしか考えられない。ヒトならば鍬やスコップなどの道具を使うだろうが、その形跡はない。なにより、ヒトが苦労して掘り起こした木を放置する理由がわからない。
 この他にもこんな風に掘り起こされた木の根があちこちでみつかった(写真2、3)。そのすべてがカヤの木であった。写真3は直径30センチほどの立派な成木だ。どうやらイノシシはカヤの根が好きなようだ。掘り起こされたカヤの根の皮がかじりとられ、白い材がむき出しになっていた(写真4)。
 これらの観察から、イノシシはカヤの根を「食べる」のだと考えられる。カヤの根が特別に美味いのだろうか、それともイノシシにとって何かの「薬効」があるのだろうか。漢方では、カヤの実には駆虫効果があるとされているそうだ。つまり「虫下し」である。これだけでは確証を持てないが、イノシシが腸内の寄生虫を駆除するためにカヤの根をかじるのだとしたらとても興味深い。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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写真4
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 イノシシ Sus scrofa(イノシシ科)

 カヤ Torreya nucifera(イチイ科)

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