No.1389 2015/09/27(日)

 バカマツタケ


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 この日は、キノコ採りの達人に山を案内していただいた。山へ向かう道すがら、キンモクセイの花の強い香りが漂ってきた。「キンモクセイの花の頃がキノコ採りのシーズンなんだ」と達人が教えてくれた。
 険しい斜面を登り一息ついていると、「あったぞ」と達人の声がする。急いで駆け寄ると目当てのキノコがそこにあった(写真1)。バカマツタケである。
 「馬鹿マツタケ」とはひどい名前だが、マツタケと近縁のキノコで、その香りと味はマツタケに勝るとも劣らない。アカマツなどの林に生育するマツタケと違って、ブナ科の樹木の根と共生するバカマツタケはコナラやスダジイの森に発生する。マツタケが分布しない房総丘陵では、地元の人々はこのキノコを「房州マツタケ」などと呼んで珍重している。
 「こっちのはもっとすごいぞ」と達人に促され、シイの木の根元をのぞき込んで仰天した。バカマツタケが列を成して生えているではないか(写真2)。ざっと15本はある。「いいシロだなぁ」と達人。バカマツタケは共生相手であるシイなどの根の周囲の地中に菌糸を張り巡らせている。そんな場所を少し掘ってみると菌糸のせいで土が白く見える。これを「シロ」と呼ぶのだそうだ。シロが元気だと、たくさんのキノコが発生する。
 達人の経験からすると、今年のように夏に暑い日が続いた後、急に涼しくなりさらに雨が降るとキノコがよく発生するのだそうだ。今年まさにキノコの当たり年のようで、ほんの1時間ほどの探索で大量のバカマツタケを収穫できた。数えたら86本もあった(写真3)。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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 キンモクセイ Osmanthus fragrans var. aurantiacus(モクセイ科)

 バカマツタケ Tricholoma bakamatsutake(キシメジ科)

 マツタケ Tricholoma matsutake(キシメジ科)

 アカマツ Pinus densiflora(マツ科)

 コナラ Quercus serrata(ブナ科)

 スダジイ Castanopsis sieboldii(ブナ科)

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