No.1403 2015/12/11(金)

 ヤドリギの標本


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 長野県の知人からヤドリギの標本が届いた(写真1)。ケヤキの枝に寄生したものだ。この標本の興味深いところは、異なる色の果実が混在しているように見えるところだ(写真2)。ヤドリギの果実は薄い黄色に熟すが、橙色から赤色に熟すものがあって、これを別品種アカミヤドリギという。一株のヤドリギに異なる色の果実がついているのだとしたら面白い。そこで、この標本を切断してヤドリギの根の部分を観察してみようという相談になったのだ。
 ヤドリギの根元をみると、3本の幹が隣り合って生えているようにみえる(写真3)。根元から枝をたどってみると、黄色い果実と赤い果実は別の幹についていることがわかった(写真4)。根の部分がはっきりと分かれていれば隣接して寄生した別株だということがわかる。少し乾燥させた後に切断してみる予定だ。
 この標本では、ヤドリギの根元周囲のケヤキの枝が大きく膨れている(写真5)。膨れた部分ではケヤキの樹皮が割れ、細かな緑色の「にきび」のようなものがみえる。拡大してみると、「にきび」のようなものは生え始めのヤドリギの茎のようにもみえる(写真6)。断面をみればこの「にきび」の正体もわかるかも知れない。
 ところで、拡大撮影をしていたら、この「にきび」の周辺で動き回る多数の影に気づいた。写真6にもたくさん写っている。どうやらヤドリギアブラムシの仲間のようだ。だとするとやはりこの「にきび」はヤドリギの一部なのだろう。早く切ってみたい。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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写真4
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写真5
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写真6
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 ヤドリギ Viscum album subsp. coloratum(ビャクダン科)

 アカミヤドリギ Viscum album subsp. coloratum f. rubroaurantiacum(ビャクダン科)

 ケヤキ Zelkova serrata(ニレ科)

 ヤドリギアブラムシの仲間 Tuberaphis sp.(アブラムシ科)

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