No.1460 2016/08/05(金)

 クサカゲロウの幼虫


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 樹皮の上を小さなゴミが動くのが目に止まった(写真1)。顔を近づけ目を凝らして見ても枯葉や枯れ草の切れ端や草のタネの寄せ集めにしか見えない(写真2)。しかしこのゴミは動いている。
 指でつまんで裏返すとその正体は体長5ミリほどの6本脚の昆虫であった(写真3)。ようやく「クサカゲロウの仲間には幼虫が「ゴミ」を背負って歩くものがいる」という話をどこかで読んだことを思い出した。これはクサカゲロウの仲間の幼虫のようだ。
 捕獲した標本を拡大してみるとこの幼虫のすごさがわかる(写真4)。まず目立つのは頭部の先にあるまるでクワガタムシのように長い大あご。これでアブラムシを捕らえて食べるのだ。胸部には3対の棍棒(こんぼう)状の突起があって、丸くふくらんだ先端部に太い毛が放射状に生えている。写真では腹部は見えにくいが、胸部の毛と比べるとやや細い白っぽい毛が密生している。これらの毛に「ゴミ」を引っかけて背負っているらしい。ここまでして姿を隠すのは何のためだろう。
 参考までに過去に別の場所で撮影したクサカゲロウの仲間の成虫の写真を載せておく(写真5)。これで体長2センチほど。クサカゲロウの仲間は日本でも30種以上が知られていて、成虫はみな緑色の華奢(きゃしゃ)な身体と薄く弱々しい翅を持つ。幼虫はすべて肉食で、種によって「ゴミ」を背負うタイプと背負わないタイプがある。いずれも種の同定は容易ではなく、ここに示した幼虫や成虫はいずれも同定に至っていないので「クサカゲロウの仲間」としておく。
 参考までに、千葉大学大学院園芸学研究科応用昆虫学研究グループのウェブサイトには「日本産クサカゲロウ図鑑」というすばらしいコンテンツがある。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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写真4
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写真5
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 クサカゲロウの仲間 Chrysopidae sp.(クサカゲロウ科)

 


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