No.1499 2017/02/17(金)

 トラツグミ


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 三島小学校に行くと、低学年の男の子達が息をはずませて駆け寄ってきてぼくに訴えた。

「おっきな鳥が死んでる!」
「え? どうしたの?」
「窓の下におっきな鳥が落ちて死んでるの!」
「そうか、じゃあ見に行こう」

 子ども達に教えられた場所は鉄筋校舎裏の一角であった(写真1)。玉砂利が敷かれた地面にヒヨドリほどの大きさの鳥が落ちている(写真2)。黒と褐色の独特のまだら模様から、すぐにトラツグミだとわかった。窓ガラスに衝突して死んだものと思われる。

「まず君たちに覚えておいてほしいことがある。死んでいる鳥を見つけても、素手で触ってはいけないよ。鳥インフルエンザという病気を持っていることがあるからね。」

 そう話して、ポリ袋を二重にしてトラツグミの死体を包み慎重に密封してから子ども達に見せた。

「これはトラツグミという鳥だね。きっと窓ガラスにぶつかって死んでしまったんだ。」
「どうしてぶつかったの?」
「君たちはガラスが透明だって知ってるから、ぶつからないようにするだろ? でも鳥はガラスというものを知らないから、空が続いていると思ってぶつかっちゃうみたいだよ。」
「ふーん。さわっていい?」
「袋の上からそっと触ってごらん。」
「やわらかい。」

 三島小学校はいまや千葉県内でもっとも山奥に位置する小学校である。そこの子ども達にとっても、野鳥の死体に出会う機会は珍しいとみえて、彼らにとってこのトラツグミの死体発見は大事件だったようだ。また彼らがこの鳥を「おっきい」と言ったことも印象に残った。トラツグミは野鳥の中ではやや小型の部類に入ると思うが、初めて至近距離で見た鳥は彼らにはとても大きく見えたに違いない。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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 トラツグミ Zoothera dauma(ツグミ科)

 


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