No.1500 2017/02/24(金)

 ふきのとう


dummy

 君津市宿原にお住まいのTさんが教室博物館にふきのとうを持ってきてくださった(写真1)。中には花が咲き始めているものがあった(写真2、3)。ふきのとうはフキという植物の花だ。もう少し正確にいうと、フキの「伸び始めの花茎とそれを包む苞葉(ほうよう)」である。そして、フキには雄株と雌株がある。

 Tさんに質問した。
「ふきのとうに雄と雌があるって、知ってました?」
「知らなかった。」
「この星型の小さな花が集まっているのが雄なんです。」(写真2、4)
「へえ、じゃあ雌は?」
「雌の花はこっち。白くて細い歯ブラシの毛の集まりみたいでしょう?」(写真3、5)
「ほんとだ、今まで気にしたことなかったなぁ。」

 ふきのとうはやがて花茎を伸ばし、見た目にも花らしくなる。雄株の花茎(写真6)は高さ20センチ程になるが、それ以上は伸びず、花が終わるとじきに枯れる。雌株の方は雄株の倍以上の高さに伸び(写真7)、やがて結実する(写真8)。フキの果実は綿毛を持っていて、タンポポと同様に風に運ばれて広がる。

 Tさんが帰った後、常連のKさんが来られたので尋ねてみた。
「ふきのとうに雄と雌があるって、知ってました?」
「知ってる、知ってる。近所のおばあちゃんに教わった。」
「へえ、さすがですね。」
「そのおばあちゃんが言うには、ふきのとうは雌がおいしくて、雄はまずいんだって。」
「ええ! ふきのとうの雄雌で味が違うんですか!」
「私は味の違いを気にしたことがないけど、おばあちゃんはそう言ってた。」
「今度、雄と雌を食べ比べてみて、結果を教えてください。」
「わかった。やってみますね。」

 ふきのとうの雌雄で味が違うという話は初耳で、とても興味深かった。ところで、Kさんに2つのふきのとうを見せて、どちらが雌かを訊いたところ、雄株を指して「こっちが雌だと教わった」と答えた。「雌の方は小さな花びらがあってかわいいが、雄の花はかわいくない」と。これは生物学的には正しくないが、 食べるためのふきのとうを区別するのに問題はない。民俗分類の事例としてとても面白いお話を聞くことができた。
 (尾崎煙雄)

dummy
dummy
写真1
dummy
dummy
写真2 雄株
dummy
dummy
写真3 雌株
dummy
dummy
写真4 雄花
dummy
dummy
写真5 雌花
dummy
dummy
写真6 雄株(3月中旬)
dummy
dummy
写真7 雌株(3月中旬)
dummy
dummy
写真8 雌株(4月下旬)
dummy
dummy

 フキ Petasites japonicus(キク科)

 


ニュース一覧へもどる