No.1542 2017/08/24(木)

 ムラサキホコリの仲間


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 清澄山系にて。倒木の表面に赤褐色の「たわし」のようなものがついている(写真1)。側面から見ると、黒くて糸のように細い多数の軸が倒木の表面から立ち上がり、それぞれの軸の上部3分の2はやや太く、まるで極細のアイスキャンディが束になったように見える(写真2)。高さは2センチほど。太くなった部分の表面は赤褐色の粉状のもので被われている(写真3)。これはムラサキホコリの仲間で、おそらくサビムラサキホコリという種だと思われる。
 ムラサキホコリの仲間は「変形菌(へんけいきん)」という生物群に属している。「菌」とつくものの、現在の生物学では変形菌は菌類(キノコやカビの仲間)とはまったく別の生物と考えられている。しかし20世紀半ばまでは、変形菌は菌類に含まれるものと考えられていて、当時は「ムラサキホコリカビ」というように名前に「カビ」をつけて呼ばれていた。
 変形菌の生活史の最大の特徴は「変形体(へんけいたい)」と「子実体(しじつたい)」というまったく見かけの異なる2つの相を持つこと。このページに掲げた写真はすべて子実体の姿である。子実体は「菌類」のキノコやカビと同様に、胞子を生産して散布するためのものである。一方、変形体は不定形の「スライム」状の姿をしており、湿り気のある地面などで大きなアメーバのようにはい回って微生物を捕食する。あるとき、変形体が倒木の表面などに移動して子実体に大変身する。写真4は、変形体から子実体に変身する途中(ほぼ子実体になったもの)の姿である。
 胞子を飛ばした後の子実体は、毛のような軸だけが残り、やがて枯れてしまう(写真5)。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3

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写真4

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写真5

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 サビムラサキホコリ Stemonitis axifera(ムラサキホコリ科)

 


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