No.1546 2017/08/25(金)

 セミノハリセンボン


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 清澄山系にて。奇妙なものが地表に落ちているのに気づいた(写真1)。長さは3センチほどで、表面にたくさんの白い剛毛がブラシ状に生えている。昆虫の死体にカビが生えているのだろうか。
 近寄って観察してみると、大きく透明な翅(はね)がある(写真2)。セミに違いない。角度を変えてみると、セミの頭部や脚も判別できた(写真3)。ヒグラシのようだ。そして、その身体中から長さ2ミリほどのマチ針のようなものが生えている。
 これはヒグラシに寄生した菌類で、その名を「セミノハリセンボン」という。まさに、セミの身体に多数の針が刺さっているように見える。セミノハリセンボンは広義の冬虫夏草の仲間で、無性生殖を行う。小さなマチ針のようなものの先端は、まるで花粉を出した花の雄しべのように、粉をふいている。この粉は「分生子(ぶんせいし)」と呼ばれる無性の胞子で、セミノハリセンボンはこの分生子で無性的に殖える。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3

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 セミノハリセンボン Purpureocillium takamizusanense(バッカクキン科)

 ヒグラシ Tanna japonensis(セミ科)

 


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