No.1694 2019/5/03(金)

 ハナウド


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 君津市内にて。ため池の堤防の土手でハナウドが花盛りとなっていた(写真1)。ハナウドは高さ1メートル以上になる大形の草で、5月前半に白い花が目立つ。千葉県は分布のほぼ東限で、県内の生育地は多くはない。

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写真1
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 ハナウドの花はまるでテーブルのようだ(写真2)。茎の先端から多数の花茎が放射状に分枝して先端に花がつく。よくみるとそれぞれの花茎の先端からさらに放射状に小さな花茎が分枝し、その先端に一つずつ花がついてる。つまり、2段階の線香花火のような複雑な形をしているのだ。このような花の咲き方を複散形花序(ふくさんけいかじょ)という。咲き始めの若い花序を見るとその形がわかりやすい(写真3)。

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写真2
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写真3
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 ハナウドの花序の一部を拡大して見るとおもしろい(写真4)。個々の花は5枚の花弁を持つが、花序の外側ほど花弁が大きく、外縁に位置する花のさらに外側の花弁は大きく2つに切れ込み「V字形」となっている。幾何学的に空間を埋めるように配置された花はまるでM.C.エッシャーの版画を思わせる。

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写真4
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写真5
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 その結果、数百の花が集まった花序全体は直径20センチにもなるテーブル状となり、多くの昆虫がその上を歩き回っている(写真2)。もっとも数多く見られたのはコアオハナムグリだ(写真5)。体長13ミリ前後のこの甲虫は花粉を食べるために次々と花に頭を突っ込んで花序の上を歩き回るので、頭や胸は花粉まみれだ。そして、ときどき飛んでは近くのハナウドに移動する。コアオハナムグリはハナウドにとって有効な送粉者(そうふんしゃ;花粉を媒介する生物のこと)であるようだ。
 (尾崎煙雄)

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 ハナウド Heracleum sphondylium var. nipponicum(セリ科)

 コアオハナムグリ Gametis jucunda(コガネムシ科)

 


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