No.1700 2019/5/23(木)

 アリグモ


dummy

 木更津市内にて。クリの葉上にアリが2匹(写真1)。と思った次の瞬間、何か違和感を覚え、そらした視線を戻した。やはりアリではなくアリグモであった(写真2)。アリグモはアリに擬態したクモの一種で、体長7ミリ前後。

dummy
dummy
写真1
dummy
dummy
写真2
dummy
dummy

 アリグモの仲間は雄の上顎(じょうがく)が発達している。写真2の左が雄、右が雌である。この雄は右の前脚を失っているようで、ますますアリらしく見える。雌の方は膜状に張られた糸でできた「巣」の中にいる。
 雄のアリグモの頭の先端にある上顎は立派で、これを含めれば体長は1センチほどになる(写真3)。そうとわかっていてもクロヤマアリなどのアリによく似ている。見事な擬態だ。

dummy
dummy
写真3
dummy
dummy

 アリグモを含むハエトリグモ科のクモは徘徊性(はいかいせい)といって、網(いわゆるクモの巣)を張らず、歩き回って獲物を捕らえるハンターだ。そんなアリグモがこの写真4の「巣」のようなものを作るとは知らなかった。文献を調べてみたところ、山崎(2015)の中に次のような記述を見つけた。
「一般にアリグモ属の種は、雄の成体が、同種雌の亜成体の住居を覆うようにさらに大きな住居を作り、雌の最終脱皮を待ち交配する」
 どうやらこの「巣」はアリグモの雌の住居であり、ちょうどそこで最終脱皮を終え、成体になったところのようだ。写真4の右上には脱皮殻も写っている。そして雄はこの雌の住居の近くで雌の脱皮を待ち構えていたところなのだろう。文献の記述にあるような「さらに大きな住居」をこれから作るのかもしれない。
 (尾崎煙雄)

dummy
dummy
写真4
dummy
dummy

 アリグモ  Myrmarachne japonica(ハエトリグモ科)

 クロヤマアリ  Formica japonica(アリ科)

 
dummy

【文献】山崎健史(2015)東南アジアにおけるアリグモ属研究.Acta Arachnologica, 64(1):49-56.

dummy


ニュース一覧へもどる