No.1723 2019/08/05(月)

 アオタマムシ


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 房総丘陵の森にて。立ち枯れたモミの大木の幹を歩く甲虫を見つけた(写真1)。写真1の中央に虫が写っているのだが、写真ではわかりにくい。しかし、肉眼ではキラリとした輝きが目を射る。

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写真1
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 「モミの枯れ木に来る輝く甲虫といえば...」と身構え、息を殺して接近した。やはり、期待したとおりアオタマムシであった(写真2)。体長2センチ半ほど。全身が青緑色の金属光沢を放っている。身体の側面に近い方は赤銅色に見えるのは構造色によるもの。構造色とは体表面の微細な構造によって反射する光の波長が変わり、色づいて見える仕組みだ。色素による色と違い、光の当たる角度によって色が変わって見えることがある。

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写真2
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 角度が変われば、翅全体が赤銅色に見えることもある(写真3)。いずれにしても実に美しい甲虫である。モミの幹を歩き回り、所々で腹端を樹皮のすき間に押し込む仕草をしていたので、産卵に訪れた雌であろう。しばらく見惚れているうちに、不意に「ブン」と羽音を立てて飛び去った。

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写真3
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 アオタマムシは少ない甲虫で、なかなか出会えない。幼虫はモミやマツ類の枯れ木の中で育つ。これらの針葉樹の大木が多い房総丘陵の天然林はアオタマムシが棲む貴重な森である。
 (尾崎煙雄)

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 モミ Abies firma(マツ科)

 アオタマムシ Eurythyrea tenuistriata(タマムシ科)

 


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