教室博日記 No.1768

 2020/02/07(金)

 凍雨

 三島小にて。この日の朝の最低気温は零下4.1℃。今年に入って最も寒い日となった。お昼を過ぎても暗く冷たい曇天が続き、14時過ぎにちらちらと雪が舞い始めた。「とうとう雪になったか」と思い窓から外を見ると、パラパラという乾いた音に気づいた。雪の降る音にしては妙なので、外に出てみると、地面に小さな氷の粒が落ちているのに気づいた(写真1)。

地表に落ちた氷の粒
  • 写真1

 雪もわずかに降っているのだが、小さな氷の粒の方がたくさん降っているようだ。氷の粒は直径2ミリほどしかなく、透明なので地表に落ちたものはよく見えない(写真1)。地面でバウンドしてうまい具合に草の葉の上に着地したものがあったので、接写を試みた(写真2)。

直径2ミリの氷の粒
  • 写真2

 氷の粒は完全な球形に近く、透明で、中に細かな気泡がいくつも見える(写真3)。

氷の粒は透明で、中に細かな気泡がある
  • 写真3

 これは「凍雨(とうう)」というものらしい。雲から降ってくる氷といえば、「雹(ひょう)」や「霰(あられ)」が知られている。しかし雹や霰はこのように透明ではなく、白濁している。このように透明な氷の粒は凍雨といい、次のような過程で発生する。

 雪雲の下に暖かい(0℃以上の)空気の層があり、さらにその下に冷たい(0℃以下の)空気の層があるとき、降下してくる雪の結晶が暖かい空気の層でいったん融けて雨粒になり、さらにその下の冷たい空気の層で再び凍って地表に達すると凍雨になる。こんな条件が揃うことはあまりないので、凍雨は珍しい気象現象なのだそうだ。

凍雨が降った前後のアメダスデータ
  • 図1 折れ線:気温、棒:日照時間(10分毎)

 三島小から6.7キロ東にある坂畑のアメダス観測点のデータを調べてみた(図1)。

 この日、凍雨が見られたのはおよそ14:15前後のほんの10分間程度であった。零下まで冷えた朝から気温は徐々に上がったが、12時でも1.9℃と寒い日であった。13:50にやっと4.7℃まで上がったものの、14:00には3.9℃に下がり14:20まで続いた。14:30には急に4.7℃に上がり15時ころからは晴間が広がり気温も上がっていった。凍雨が見られたタイミングを図中に赤い三角形で示したが、このわずかな時間帯に凍雨が降る条件が揃ったものと考えられる。

 そもそもこの日、坂畑の観測点では観測記録に残る1ミリ以上の降水はなかった。三島小で降った雪や凍雨も降水量として記録されるレベルではなかったと思われる。珍しい気象現象に出会えたのは幸運だった。

(尾崎煙雄)