教室博日記 No.1782

 2020/03/13(金)

 マメザクラ

 房総丘陵にて。マメザクラの花が咲き始めた(写真1)。マメザクラは他のサクラ類と違って高木にならず、樹高5メートル程度の個体が多い。写真のように林縁に生えていると、他の木やつる植物にまぎれて見えにくいこともしばしばある。

マメザクラの花が咲き始めた
  • 写真1

 マメザクラは房総丘陵にはたくさん自生しているが、県北部ではまれ。富士山周辺にも分布し、そちらでは「フジザクラ」と呼ばれる。サクラ類の中では花は小さめで、花びらの色は白に近い。花びらにスリット状の切れ込みが入ることもよくある(写真2)。

花びらに深い切れ込みがあることも
  • 写真2

 花の柄には毛が生えている(写真3)また、花の付け根の赤みを帯びた筒状の部分を「がく筒(がくとう)」といい、その先は5つに裂ける。その裂片を「がく裂片」といい、その形もサクラ類の種を同定する際の手がかりとなる。マメザクラのがく裂片は卵形に近い(写真3)。なお、写真3の前景に写っているピンぼけの毛虫はクワゴマダラヒトリの幼虫。この毛虫は春先に多数発生してあらゆる植物を食べる。マメザクラの花びらの一部が欠けたようになっているのは、もしかしたらこの毛虫にかじられた痕かもしれない。

がくの形や花の柄に生えた毛が特徴
  • 写真3

 2日後の3/15に房総丘陵の別の場所を訪れたら、ほぼ満開のマメザクラの木があった(写真4)。通常、マメザクラの開花時期はソメイヨシノより早い3月中旬ころ。今年、東京ではソメイヨシノの開花が3/14と記録的に早かったが、マメザクラの開花も早めだったようだ。

3月15日にはほぼ満開に
  • 写真4 2020/03/15撮影
  • マメザクラ Cerasus incisa var. incisa(バラ科)
  • クワゴマダラヒトリ Lemyra imparilis(ヒトリガ科)
  • ソメイヨシノ Cerasus x yedoensis(バラ科)

(尾崎煙雄)