2020/03/13(金)
カタクリ
千葉県南部にて。カタクリの花が咲き始めた(写真1)。カタクリはおもに冷涼なブナ帯に生育する植物で、温暖な房総丘陵ではとても珍しい。現在より寒冷だった氷河期に房総半島に広く分布していたものが、わずかに残っているのであろうと考えられている。このような分布を「遺存分布(いぞんぶんぷ)」という。
- 写真1
この自生地では開花している個体は全体の1割未満で、多くの株はまだつぼみの状態であった(写真2)。
- 写真2
カタクリの花はうつむくようにして咲く(写真3)。6枚の花びらは強く反り返って、花の中央からは雌しべと雄しべが突き出している。雌しべは長く、先端は3つに裂けてラッパ状に広がっている。雄しべは長いものと短いものが3本ずつあり、葯(やく;花粉の入った袋)は黒っぽい紫色で、花粉は黄色。
- 写真3
真下から花を見上げると、花びらには模様がある(写真4)。この模様は、花を訪れるハチなどの昆虫に蜜がある花の中心部を指し示しているのであろう。
- 写真4
- カタクリ Erythronium japonicum(ユリ科)
(尾崎煙雄)