教室博日記 No.1785

 2020/03/15(日)

 キジの春場所

 日没間際の市原市の田んぼで、対峙する2羽の雄のキジを見つけた。2羽とも姿勢を低く保ち、近距離でにらみ合ってじりじりと距離を縮める(写真1)。互いの射程に入ると、くちばしで噛みついたり、がっちりとした肉付きの太い脚でキックしたりしては、フワッと舞い上がる(写真3~6)。極度の緊張が生み出す静寂から一転、火花を散らすような激しい闘争が始まるその様子は、まるで、相撲の立ち合いのようであった。

  • 写真1 互いににらみ合う接近戦
  • 写真2 尾羽を立て合って威嚇する
  • 写真3 激しい雄どうしの闘い
  • 写真4 どんな体勢でも相手をにらみ続ける
  • 写真5 舞いながら蹴りを繰り出す左の雄
  • 写真6 蹴りを繰り出す左の雄と、それをかわす右の雄

 この闘争は、雄どうしの縄張り争いである。繁殖期、キジの雄は、自分の縄張りに入ってきた雌と交尾する。そこに侵入してきたライバルを追い出すために闘うのである。

 どちらの雄も、キックを盛んに繰り出していた。実は、キジのかかとのあたりには、蹴爪(けづめ)と呼ばれる角質の鋭い突起が付いており、これを武器として使う(写真7)。蹴爪は、激しく闘争する雄だけが持っている特徴である。

  • 写真7 キジの雄が持つ特徴的な蹴爪(赤い丸で囲った部分)
  • キジ Phasianus colchicus(キジ科)

(平田和彦)