教室博日記 No.1788

 2020/03/25(水)

 タシギの隠れ身の術

 市原市の田んぼで、3羽のタシギが姿を現した。水田や蓮田などを主な生息場所とする冬鳥である。

 なんと言っても、まず目を引くのは非常に長いくちばしだ(写真1)。これを水田のぬかるんだ土に突っ込んで、餌となるドジョウやミミズなどをほじくり出す。タシギは視覚ではなく、くちばしの触覚をたよりに餌を探す捕食者なのである。

  • 写真1 あたりを警戒しながら、素早く歩くタシギ

 畦などの草陰に隠れていたものが、夕方になって活動を始めたようだ。おそらく日中は、猛禽類などの天敵を避けていたのだろう。タシギは異変を察知すると、すぐに枯れた植物の近くに逃げ込み(写真2)、身をひそめてじっとする(写真3)。なぜそんなに複雑でユニークな模様の背中をしているのか。その理由は、田んぼの枯れ草に擬態した彼らを見れば、すぐに納得できるだろう。そこにいると分かっていても、一度目を離すと再び見つけるのは至難の業。忍者も仰天するほどの「隠れ身の術」のスペシャリストである。写真(2、3)の中央に写っているタシギを、あなたは見つけられるだろうか。あえてどこにいるのかを示さないので、ぜひ挑戦してみてほしい。

  • 写真2 こちらに背中を向けて歩くタシギ
  • 写真3 左を向いて身を伏せるタシギ
  • タシギ Gallinago gallinago(シギ科)

(平田和彦)