教室博日記 No.1797

 2020/04/22(水)

 トホシニセマルトビハムシ

 トホシニセマルトビハムシはノキシノブというシダ植物を寄主植物としているハムシ科の甲虫で、千葉県では最近清澄山系から初めて記録されたばかりの珍しい種だ(斉藤・鈴木,2017)。一昨年、大多喜町の山でもスダジイの幹に着生するノキシノブの葉裏で見つけた(写真1)。体長は約3ミリ。

ノキシノブ葉裏に止まるトホシニセマルトビハムシ
  • 写真1 2018/04/12撮影

 今年も同じ場所へ行ってみると、たった一匹だったがまた出逢うことができた(写真2)。

ノキシノブ葉裏に止まるトホシニセマルトビハムシ
  • 写真2

 ノキシノブは珍しいものではなく付近の木の幹にも普通に着生しているのだが、トホシニセマルトビハムシは一昨年も今年もなぜか同じスダジイでしか見られなかった(写真3、4)。他のノキシノブとなにか違いがあるのだろうか。

ノキシノブが着生するスダジイ
  • 写真3
トホシニセマルノミハムシが見つかったスダジイ
  • 写真4 2018/04/12撮影

 このハムシに大きさも形もそっくりなニセクロホシテントウゴミムシダマシという虫がいる。その名にあるようにハムシ科ではなくゴミムシダマシ科の甲虫で、こちらはどこでも見られるいわゆる普通種だ。ノキシノブやマメヅタが着生しているような木の幹に止まっているのをよく見かける。この虫の詳しい食性は不明だが、木の幹に生育する地衣類を食べているようだ(写真5、6)。

木の幹に止まるニセクロホシテントウゴミムシダマシ
  • 写真5
木の幹に止まるニセクロホシテントウゴミムシダマシ
  • 写真6
トホシニセマルトビハムシ標本写真
  • 写真7 トホシニセマルトビハムシ(清澄山系産)体長3㎜
  •     標本番号CBM-ZI 217502
  • トホシニセマルトビハムシ Halticorcus kasuga(ハムシ科)
  • ノキシノブ Lepisorus thunbergianus(ウラボシ科)
  • スダジイ Castanopsis sieboldii(ブナ科)
  • ニセクロホシテントウゴミムシダマシ Derispia japonicola(ゴミムシダマシ科)
  • マメヅタ Lemmaphyllum microphyllum(ウラボシ科)
  • 【引用文献】
  • 斉藤明子・鈴木 勝(2017):東京大学千葉演習林で採集した甲虫類(Ⅸ). 房総の昆虫(60), p.21-22.

(斉藤明子)