教室博日記 No.1824

 2020/06/24(水)

 オオルリ

 房総丘陵にて。渓谷沿いの岩壁のくぼみに作られた鳥の巣を見つけた(写真1)。オーバーハングした岩が雨よけになるよい場所を見つけたものだ。

岩壁のくぼみにあった鳥の巣
  • 写真1

 この巣はおもにコケ植物を集めて作られている。ふかふかのコケでできた巣はとても居心地がよさそうだ。この巣ではメスの親鳥が卵を抱いていた(写真2)。オオルリである。オオルリのオスはるり色の羽根と美しいさえずりで知られる。一方メスは地味な褐色で、むしろ目立たない保護色になっているようだ。

コケでできた巣で卵を抱くオオルリのメス
  • 写真2

 この渓谷ではオオルリの巣が複数見つかった。たまたま留守の巣があったので中をのぞかせてもらうと、4つの白い卵があった(写真3)。

巣の中にあった4つの卵
  • 写真3

 巣の内側の卵が乗っている部分を「産座(さんざ)」という。この巣の産座には褐色で細い針金のような素材がたくさん敷き詰められていた(写真4)。よく見ると、これはコケ植物の胞子体である。コケは胞子によって繁殖する。その胞子をつくり、散布するための器官が胞子体で、細長い柄とその先端につく「蒴(さく)」でできている。蒴は胞子が入ったカプセルのようなもの。コケの胞子体を選んで集め、産座に敷き詰めてあるのにはどんな意味があるのだろうか。

巣に敷き詰められたコケの胞子体
  • 写真4
  • オオルリ Cyanoptila cyanomelana(ヒタキ科)

(尾崎煙雄)