教室博日記 No.1841

 2020/08/01(土)

 ヒナノシャクジョウ

 房総丘陵にて。暗い森の地表でヒナノシャクジョウが咲いていた(写真1)。草丈はわずか3センチほど。

ヒナノシャクジョウの姿
  • 写真1

 ヒナノシャクジョウは全体がほぼ純白で葉緑素をまったく持たないが、これでも植物である。短い茎の先端に数個から10個ほどの花が集まって咲く(写真2)。

  • 写真2 10個の花をつけたヒナノシャクジョウ

 茎には鱗片状の葉がある(写真3)が、何かの役割を果たしているようには見えず、痕跡的なものだと思われる。この植物は自力で光合成をすることはなく、地中の菌類(キノコの仲間)から栄養を得て生活している。このような植物を「菌従属栄養植物(きんじゅうぞくえいようしょくぶつ)」と呼ぶ。

  • 写真3 茎には鱗片状に退化した葉がある

 キノコに依存して生活するため、キノコが好みそうな暗く湿った地面に生えることが多い。暗い森に純白のヒナノシャクジョウがいくつも生えているとまるで夜空にまたたく星のようでもある(写真4)。

  • 写真4 一つ一つの白い点がヒナノシャクジョウ

 ところが、陽が当たり地表がからからに乾くような尾根の上にヒナノシャクジョウが生えていることもあり、「こんなところに!」と驚かされることもある(写真5)。まだまだその生態には謎が多い。

  • 写真5 乾いた尾根に生えたヒナノシャクジョウ
  • ヒナノシャクジョウ Burmannia championii(ヒナノシャクジョウ科)

(尾崎煙雄)