教室博日記 No.1848

 2020/08/13(木)

 ツチアケビ

 清澄山系にて。6/18に開花を確認したツチアケビを再び見に行った。花つきのよかった大株は期待通りに多くの果実をつけていた(写真1)。3本あった花茎の1本は倒れてしまってはいるが、3本で合計30個以上の果実を実らせている。

果実をつけた3本のツチアケビ
  • 写真1

 ツチアケビは葉緑素を持たず、菌類から栄養を得ている菌従属栄養植物(きんじゅうぞくえいようしょくぶつ)である。寄生する相手は枯れ木を分解する腐朽菌(ふきゅうきん)の一種のナラタケである。このツチアケビが寄生したナラタケは栄養状態のよい個体なのであろう。

 真っ赤なバナナのような果実は大きいもので長さ10センチほど(写真2)。ランの仲間としては異例に大きく、また異例に目立つ果実である。

  • 写真2 大きく目立つ果実をつけたツチアケビ

 ラン科植物の大半は、埃のように非常に細かい種子が風で飛ばされることによって運ばれる。しかし、ツチアケビの場合はこの目立つ果実をヒヨドリなどの鳥が食べ、中の種子が糞と一緒に排出されることで運ばれるという特殊な進化を遂げたことが明らかにされている(Suetsuguら, 2015)。

  • ツチアケビ Cyrtosia septentrionalis(ラン科)
  • 【引用文献】
  • Suetsugu K, Kawakita A, Kato M (2015) Avian seed dispersal in a mycoheterotrophic orchid Cyrtosia septentrionalis. Nature Plants 1, 15052.

(尾崎煙雄)