教室博日記 No.1881

 2020/10/26(月)

 コシオガマ

 南房総市の山にて。山道脇の斜面の茂みの一角にピンク色の花を咲かせた一群れの草を見つけた(写真1)。

  • 写真1 斜面に生えたコシオガマの株

 草丈は40センチほどで、淡いピンクの花が美しい(写真2)。

  • 写真2 コシオガマ

 長さ4センチ前後の葉は羽状に裂け、裂片には細かな鋸歯がある(写真3)。全体に軟毛が生えていて「ふんわり」とした印象の植物である。

  • 写真3 コシオガマの葉

 花は長さ2センチほどの釣り鐘形で、茎の上の方の葉の付け根に1個ずつ横向きに咲く(写真4)。

  • 写真4 コシオガマの花

 花の内部には雄しべが4本見え、そのうち2本が長くて目立つ(写真5)。

  • 写真5 コシオガマの花の内部

 このように可憐で美しい植物なのだが、実はコシオガマは寄生植物である。コシオガマの根は他の植物の根に侵入し、水や養分を吸収することができるのだ。寄生相手はとくに決まっておらず、さまざまな植物に寄生できるようだ。ただし、コシオガマ自身も緑の葉を持っていて自力で光合成ができる。しかも、コシオガマの場合には他の植物の根に寄生しなくても生育することができることも知られている。このように自力で光合成ができ、寄生してもしなくても生きられる植物のことを「条件的寄生植物」といい、寄生植物の進化の途中段階にあるものと考えられる。

  • コシオガマ Phtheirospermum japonicum(ハマウツボ科)

(尾崎煙雄)