教室博日記 No.1884

 2020/10/28(水)

 ヒメツチハンミョウ

 君津の山中にて。地面に青いものを見つけ、近づいてみるとヒメツチハンミョウだった(写真1、2)。体長は15ミリほど。この虫は、後翅が退化していて飛ぶことはなく、短い上翅(前翅)からはみ出した大きな腹部を引きずるように地面を歩く。さらに、毒を含む体液に触れるとかぶれるという、虫嫌いの人からすると目にしたくない生き物かもしれないが、カブトムシと同じ甲虫のなかまだ。

ヒメツチハンミョウ
  • 写真1
ヒメツチハンミョウ
  • 写真2

 ヒメツチハンミョウは、雌雄で触角の様子に大きな違いが現れる。雄では触角第5〜7節が他の節にくらべて肥大している。写真の個体は雄だ。成虫の形態に性的二型がある場合、その形の違いはたいてい交尾行動と関係する。この虫の場合は、交尾の前に雄は雌の背中に乗って触角の肥大部分で雌の触角を包み込んで上下にこする。そうすると、雌は動かなくなるのだそうだ(岡野ほか,2015)。その後の交尾の様子は博物館日記No.1682に報告がある。

  • ヒメツチハンミョウ Meloe coarctatus(ツチハンミョウ科)
  • 【引用文献】
  • 岡野良祐・吉富博之・矢野真志(2015):ツチハンミョウ属3種の交尾前行動. SAYABANE N.S(19):44-49.

(斉藤明子)