2020/11/05(木)
イズノシマダイモンジソウ
清澄山系にて。林道沿いの岩場に多いイズノシマダイモンジソウが花の時期を迎えた(写真1)。イズノシマダイモンジソウはダイモンジソウの変種で、伊豆諸島と房総半島南部に分布する。

- 写真1 岩の表面に生えたイズノシマダイモンジソウ
葉はややつぶれた円形で毛深い(写真2)。

- 写真2 イズノシマダイモンジソウの葉
花茎にも長い腺毛(せんもう)が密生している(写真3)。この特徴がダイモンジソウとの区別点である。

- 写真3 イズノシマダイモンジソウの花茎
花の形はダイモンジソウとほぼ同じで、放射状に並んだ白く細い5枚の花弁のうち下側の2枚がやや長い。この形が「大」の文字のように見えるところから「大文字草」の名がある。ところが、本当に「大」の字に見える花はなかなかみつからない。下側の花弁のうち1枚だけが長かったり、きれいに放射状に並んでいなかったりするものが多いのだ(写真4)。

- 写真4 「大」の字に見えない花
わりといい線を行っている株もあるが、今ひとつ達筆とは言いがたい(写真5)。大文字草を名乗るからには見事な「大」の字で納得させてもらいたいものである。幸いこの林道にはイズノシマダイモンジソウがたくさんあるので、「大文字」探しを始めた。

- 写真5 「大」の字に近いが今ひとつの花
まあまあよいと思える花を見つけた(写真6)が、こんなものだろうか。

- 写真6 まあまあ大文字の花
字の形はそこそこ整っているが、花弁に小さな鋸歯があって筆の「かすれ」のように見えて面白い花もあった(写真7)。

- 写真7 花弁に鋸歯がある花
これはというものがなかなか見つからずいいかげん飽きてきたころ、ついに達筆と呼べる大文字を見つけた(写真8)。バランスといい、左右の「はらい」の優美さといい、文句のつけようがない。

- 写真8 ついに見つけた達筆の「大文字」
納得のいく「大文字」を見つけて満足したが、数多くの花を見て気づいたのは、イズノシマダイモンジソウの花の個体差が大きいということであった。
- イズノシマダイモンジソウ Saxifraga fortunei var. jotanii(ユキノシタ科)
- ダイモンジソウ Saxifraga fortunei var. alpina(ユキノシタ科)
(尾崎煙雄)