教室博日記 No.1895

 2020/11/20(金)

 テイカカズラとチョウジカズラ

 海岸植生を見に、大房岬に立ち寄った。崖が迫る小さな砂浜に出ると、葉の厚いつる植物が繁茂している(写真1)。見たことがある気がするがどうもピンとこない。枝先(つる先?)を採取して持ち帰り、図鑑で調べた。葉裏の葉脈の網目模様が特徴的で、これはテイカカズラではないかと思ったが、まだ違和感がある。

大房岬の砂浜に繁茂していたテイカカズラと思われる葉の厚いつる植物
  • 写真1

 テイカカズラは本州以南の常緑広葉樹林内や岩場に分布する、それほど珍しくないつる性常緑低木である。我が中央博物館の本館に併設された生態園にも生えている。毎日のように見ているテイカカズラと大房岬のものは、何か違う気がする。

 テイカカズラは、葉形の変異が大きい。他の木に登っているつるにつく葉は、長さ3~8センチほどで葉の縁に鋸歯はない。一方、地面を這っているつるにつく葉は、長さ1~2センチほどと小さく、縁に波状の浅い鋸歯があり、葉脈に沿って白い斑が入ることが多い(写真2)。地上にあるので、この葉はよく目につく。

  • 写真2 中央博物館生態園のテイカカズラ

 さらに調べると、千葉県では南部でテイカカズラの変種、チョウジカズラが分布することがわかった。チョウジカズラは主に沿岸部に生え、葉や花がテイカカズラより大きく、地面を這うつるにつく葉に白い斑が入りにくいという特徴があるようだ。

 大房岬で見たテイカカズラ(?)の葉は、やや大きく、海岸で潮風を受けるせいかかなり厚く、ごつい印象である。ただし、地面を這うつるが見当たらなかったので、白い斑については未確認である。花の時期でもなかったので花で判断することもできなかった。海岸に生えていることと併せて考えるとチョウジカズラの可能性が高そうだが、変種の同定は難しい。テイカカズラ(チョウジカズラ)の花の咲く時期に、また大房岬に行く用事ができた。

  • テイカカズラ Trachelospermum asiaticum(キョウチクトウ科)
  • チョウジカズラ Trachelospermum asiaticum var. majus(キョウチクトウ科)

(西内李佳)